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相続債務について仮差押え後の示談が有効かどうかを争った裁判

【裁判】
事件番号: 令和1(受)1166
事件名:損害賠償等請求事件
裁判年月日:令和3年1月12日
法廷名:最高裁判所第三小法廷 裁判種別
裁判種別:判決
結果:破棄差戻


【訴訟経緯】
強盗致傷事件により負った相続債務について仮差押え後の示談が有効かどうかを争った裁判。

■詳細
・事件発生(平成22年9月):Aが引き起こした強盗致傷事件で、上告人が被害者。

・交通事故と死亡(平成26年9月):被上告人が自動車事故を引き起こし、Aの親(B)が死亡。Bの相続人は、妻であるC並びに子であるA,D及びE(「本件相続人ら」と呼称)

・損害賠償請求と仮差押え(平成27年11月):上告人が強盗事件の損害賠償を「被上告人」と「本件相続人ら」に求め、約4,822万3,907円が仮仮差押命令が発令される

・示談成立(平成28年10月6日):「被上告人」が「本件相続人ら」に対し、本件事故による一切の損害賠償金として示談で約4,063万2,940円の損害賠償金を支払うことに同意。 「被上告人」が内金として約3,000万1,100円を速やかに支払い、残額は後日確定。
※上記内金が支払われたときは、被上告人と本件相続人らとの間には、本件示談で定めるほか、何ら債権債務のないことを相互合意する

・自動車事故損害賠償(平成28年10月20日頃):「被上告人」が保険会社から約3,000万1,100円を受け取る

・再請求と債権差押え(平成30年3月7日):上告人が再び請求し、約4,822万3,907円に対する債権差押命令が発令


【判決】
判決


【判決趣旨】
上告人が被上告人に対して本件示談金額を超える額の請求をすることができないとした原審の判断には、法令の解釈適用を誤った違法がある
※判決文一部抜粋

■要約
原審では示談金額を上限とし、それを認めたが、上告審ではこの判断が法令に違反しているとされ、再審理が命じられました。これにより、原告は被告に対して示談金額を超える金額を再び請求できる可能性が生じました。

■上告審で判決が覆った理由
上告審が原審の判断を法令に違反していると判断した主な理由は、仮差押えにより示談が成立した後、債権者と第三債務者(被告)が金額を確認する示談を結んだ場合でも、債権者がその後に金額を変更することができないとする原審の立場に対する反論です。 原審は、債権者(原告)が仮差押えを受けた後に示談を結んだ場合でも、示談金額を超える金額の請求はできないと判断しました。これに対して上告審は、債権者と第三債務者(被告)が示談を結んだ場合、その後の金額変更が仮差押えを受けた債権者を害することはできないとする原審の立場に対して反論しました。


【理由】
債権の仮差押えを受けた仮差押債務者は、当該債権の処分を禁止されるから、仮差押債務者がその後に第三債務者との間で当該債権の金額を確認する旨の示談をし ても、仮差押債務者及び第三債務者は、仮差押債権者を害する限度において、当該示談をもって仮差押債権者に対抗することができない。
※判決文一部抜粋

■要約
示談は仮差押命令の後であり、示談金額が損害賠償請求権の総額を下回れば上告人にとって不利になります。よって原審の判決に異議を唱えました。


【最後に】
本判決では示談が重要な役割を果たしています。法的紛争が生じた場合、当事者間で示談が成立することで訴訟手続きを回避し、合意に達することができます。ただし、示談を行う際には、被害者に不利にならないよう具体的な金額や条件を確認し、検討する必要があると言えます。