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共有物分割取得した土地の不動産取得税が無効だとして争った裁判

【裁判】
事件番号:平成31(行ヒ)99
事件名:不動産取得税賦課決定処分取消請求事件
裁判年月日:令和2年3月19日
法廷名:最高裁判所第一小法廷
裁判種別:判決
結果:破棄自判


【訴訟経緯】
相続により共有物分割し取得した土地の不動産取得税の課税が無効だとして争った裁判。

■詳細
・Bが他界したことにより、Aと被上告人はBが所有していた土地(土地X)を1/2づつ取得し、所有権移転登記を行った
・Aと被上告人はBが所有していた土地(土地X)を、「土地1」「土地2」に分筆する登記を行った
・「土地1」については、Aが被上告人の持分全部を取得、「土地2」については被上告人がAの持分全部を取得する所有権移転登記を行った
・各土地の登記上の地積は、「土地1」が617㎡。「土地2」が566㎡である
・「土地1」と「土地2」は、一体的に全体が駐車場として利用されている
・大阪府泉北府税事務所長は、Aに対し、本件土地取得には持分超過部分の取得が含まれるとして、課税標準額を101万3000円、税額を3万300円とする処分をした
・Aは本決定に対して、不服の申立を行った
・審議中、Aが他界したため、被上告人が本件を承継した
・非上告人は、「地方税法73条の7第2号3」により不動産取得税を課することができず、本処分は違法であると訴えている

■本裁判のポイント
以下2点がポイントになります。
・持分より、Aが実際に取得した土地の方が広い
・原審では、持分超過分有無を判断する際は、評価方法によって差異が発生することからより慎重な評価方法で判断すべきと判決している


【判決】
破棄自判


【判決趣旨】
評価基準により隣接する2筆以上の宅地を一画地として認定して画地計算法を適用する場合において、各筆の宅地の評点数は、画地計算法の適用により算出された当該画地の単位地積当たりの評点数に、各筆の宅地の地積を乗ずることによって算出されるものというべきである。
そして、共有物の分割による不動産の取得に係る持分超過部分の有無及び額の判断のため、法73条の21第2項に基づき評価基準によって当該不動産に係る不動産取得税の課税標準となるべき価格を算定する場合や、一画地を構成する各筆の宅地の所有者が異なる場合であっても、これと別異に解する理由はない。
※判決文一部抜粋
※本土地に関して言えば、分筆の仕方で評価方法が異なると評価の不均衡を起こすため、土地1を一画地として等しく評価するのが妥当である、と判断しています。


【理由】
そうすると、本件処分において、本件各土地を一画地として画地計算法を適用して算出した価格に本件土地1と本件各土地との地積比を乗ずることにより、本件土地1の価格を算定したことは、評価基準の定める評価方法に従ったものということができる。
※判決文一部抜粋


【最後に】
この判決を理解するには、「地方税法73条」「地方税法73条の7第2号3」「地方税法73条の21第2項」を理解する必要がありますので、記載しておきます。
<地方税法73条の7>
・地方税法73条の7
→道府県は、次に掲げる不動産の取得に対しては、不動産取得税を課することができない。
<地方税法73条の7第2号3>
・地方税法73条の7第2号3
→共有物の分割による不動産の取得(当該不動産の取得者の分割前の当該共有物に係る持分の割合を超える部分の取得を除く。)
A及び被上告人は、本法令に基づき、不動産取得税が無効だと訴えています。

<地方税法73条の21第2項>
道府県知事は、固定資産課税台帳に固定資産の価格が登録されていない不動産又は前項但書の規定に該当する不動産については、第三百八十八条第一項の固定資産評価基準によつて、当該不動産に係る不動産取得税の課税標準となるべき価格を決定するものとする。

原審及び本判決では、本法令に基づき、「不動産取得税をどのように課すのか」その考え方で判決が異なっているのが特徴です。