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遺留分減殺請求に対し、養子縁組無効を求めた裁判

【裁判】
事件番号:平成30(受)1197
事件名:養子縁組無効確認請求事件
裁判年月日:平成31年3月5日
法廷名:最高裁判所第三小法廷
裁判種別:判決
結果:破棄自判


【訴訟経緯】
訴訟における関係図が複雑なため、以下画像を参照ください。
■関係図

訴訟経緯
■経緯
・平成22年10月、亡Bを養親、亡Cを養子とする養子縁組の届出が、徳島県某町に提出される
・本件に関わる家族関係は上記図の通りである
・平成25年12月、Bは亡くなる
・被上告人(姉の夫)は、亡Bが残した自筆証書遺言により、その相続財産全部の包括遺贈を受ける
・平成28年1月、被上告人は亡Cから遺留分減殺請求訴訟を提起される
・平成29年10月、亡Cが死亡したため上告補助参加人(亡Cの妻)は上記訴訟を承継し、本件に至る

本件は、被上告人が検察官に対し、本件養子縁組の無効確認を求める事案である。


【判決】
原判決を破棄し、 被上告人の控訴を棄却。
※本件養子縁組の無効を棄却


【判決趣旨】
被相養子縁組の無効の訴えは縁組当事者以外の者もこれを提起することができるが、当該養子縁組が無効であることにより自己の身分関係に関する地位に直接影響を受けることのない者は上記訴えにつき法律上の利益を有しないと解される。
(最高裁昭和59年(オ)第236号同63年3月1日第三小法廷判決・民集42巻3号157頁参照)
※判決文一部抜粋


【理由】
養子縁組の無効の訴えを提起する者は、養親の相続財産全部の包括遺贈を受けたことから直ちに当該訴えにつき法律上の利益を有するとはいえないと解するのが相当である。
そして、被上告人は、亡Bの相続財産全部の包括遺贈を受けたものの、亡Bとの間に親族関係がなく、亡Cとの間に義兄(2親等の姻族)という身分関係があるにすぎないから、本件養子縁組の無効により自己の身分関係に関する地位に直接影響を受けることはなく、本件養子縁組の無効の訴えにつき法律上の利益を有しないというべきである。
※判決文一部抜粋


■ポイント
本判決のポイントは、「養子縁組の無効の訴えは、訴えた者の地位に直接影響が出るか?」が判断基準になっています。
本件で言えば、養子無効の訴えにより、「訴えた者の遺産分配継承権が上がる」=「訴えた者の法定相続分が増える・遺留分金額が上がるか?」という事になります。
原審では、遺留分減殺権、つまり、遺留分請求の金額に関わってくるので、法律上の利益に関わると判決されていますが、本審では、被上告人(遺言書により相続財産を全て包括遺贈した方)が元々法定相続人ではなく、遺言書による相続財産全部の包括遺贈を受けたことから、養子縁組の無効を認めたとしても、被上告人の相続上の立場は変わらない、と判断されています。
=被上告人の遺産分配継承権が上がらない


【最後に】
本判決で注視すべきポイントは、被上告人が相続財産を全て包括遺贈されていたことにあります。もし、被上告人が遺言書にて相続財産を全て受け取っていなかったら、また違う判決が出ていたと推察できますので、注意が必要です。