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相続財産を贈与した時の遺留分減殺請求に関する訴え

【裁判】
事件番号:平成29(受)1735
事件名:遺留分減殺請求事件
裁判年月日:平成30年10月19日
法廷名:最高裁判所第二小法廷
裁判種別:判決
結果:破棄差戻


【訴訟経緯】
相続財産を贈与した時の遺留分減殺請求に関する訴え。

■具体的背景
(1) 上告人(子1)、被上告人(子2)及びC(子3)はいずれもB(父)とA(母)との間の子である。Dは、被上告人(子2)の妻であって、亡B及び亡Aと養子縁組をしたものである。(B(父)とA(母)の子扱い)
→B(父)とA(母)には、上告人(子1)、被上告人(子2)、D(AとBの子扱い)及びC(子3)の計4人の子がいることになる
(2) B(父)は、平成20年12月に亡くなった。
→B(父)の法定相続人は、A(母)、上告人(子1)、被上告人(子2)C(子3)、D(AとBの子扱い)がいることになる
(3) B(父)の遺産について、A(母)及びD(養子縁組した「子」)は、遺産分割が未了の間に、被上告人(子2)に対し、各自の相続分を譲渡し(以下、「本件相続分譲渡」という。)、同手続から脱退した。
(4) B(父)の遺産につき、上告人(子1)、被上告人(子2)C(子3)の間において、平成22年12月、遺産分割調停が成立し、これにより、Bの資産である土地、建物、預貯金を子3人で相続する事となる。
(5) 平成22年8月、 A(母)はその有する全財産を被上告人(子2)に相続させる旨の公正証書遺言をした。
(6) 平成26年7月、A(母)は他界する。その法定相続人は、上告人、被上告人、C及びDである。
(7) A(母)は、その相続開始時において、約35万円の預金債権を有していたほか、約36万円の未払介護施設利用料債務を負っていた。
(8) 平成26年11月、上告人(子1)は被上告人(子2)に対し、A(母)の相続に関して遺留分減殺請求権を行使する旨の意思表示をした。

■ポイント
B(父)の相続時、A(母)が被上告人(子2)に対し、相続分を譲渡した件が遺留分判定及び贈与に当たるかどうかを争った裁判


【判決】
原判決を破棄、 本件を東京高等裁判所に差し戻し
※原審では贈与に当たらず、遺留分侵害には当たらないと判断


【判決趣旨】
共同相続人間においてされた無償による相続分の譲渡は、譲渡に係る相続分に含まれる積極財産及び消極財産の価額等を考慮して算定した当該相続分に財産的価値があるとはいえない場合を除き、上記譲渡をした者の相続において、民法903条1項に規定する「贈与」に当たる。
※判決文一部抜粋


【理由】
共同相続人間で相続分の譲渡がされたときは、積極財産と消極財産とを包括した遺産全体に対する譲渡人の割合的な持分が譲受人に移転し、相続分の譲渡に伴って個々の相続財産についての共有持分の移転も生ずるものと解される。
相続分の譲渡は、譲渡に係る相続分に含まれる積極財産及び消極財産の価額等を考慮して算定した当該相続分に財産的価値があるとはいえない場合を除き、譲渡人から譲受人に対し経済的利益を合意によって移転するものということができる。遺産の分割が相続開始の時に遡ってその効力を生ずる(民法909条本文)とされていることは、以上のように解することの妨げとなるものではない。
※判決文一部抜粋

【最後に】
民法905条では「相続分の取戻権」について、1044条では「被相続人の贈与がどのような範囲で遺留分の算定に含まれるのか」について記載があります。
判決の根幹となった民法903条は以下に記載しておきますので、こちらも参考人すると良いでしょう。

■民法第903条
1.共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、第900条から第902条までの規定により算定した相続分の中からその遺贈又は贈与の価額を控除した残額をもってその者の相続分とする。
2.遺贈又は贈与の価額が、相続分の価額に等しく、又はこれを超えるときは、受遺者又は受贈者は、その相続分を受けることができない。
3.被相続人が前2項の規定と異なった意思を表示したときは、その意思に従う。