会社イメージ

公営住宅の家屋明渡等の訴え

【裁判】
事件番号:平成29(受)491
事件名:居住確認等請求本訴,家屋明渡等請求反訴事件
裁判年月日:平成29年12月21日
法廷名:最高裁判所第一小法廷
裁判種別:判決
結果:棄却


【訴訟経緯】
相続債権者又は受遺者が不利益になる場合の相続財産分離に関するに対する訴え。

■具体的背景
・被上告人は、平成20年1月(被相続人)に対し、国の補助を受けて建設された本件住宅を賃貸して引き渡した。(法18条所定の改良住宅に入居させるべき者に該当するとして)
・上告人(Aの相続人)は、平成22年5月頃からAを介護するため本件住宅に同居
・上告人(Aの相続人)は本件住宅の同居承認を京都市長に対し申請しなかった
・Aは,平成25年9月に亡くなった
・平成27年7月、相続人間で上告人が本件住宅の使用権を取得する旨の遺産分割協議が成立
・Aは当該改良住宅を明け渡すよう命じられた為、本件訴えに至る
※尚、原審は上告人による本件住宅の使用権の承継を否定


【判決】
判決、本件抗告を棄却。


【判決趣旨】
国の補助を受けて建設された改良住宅の入居者が死亡した場合における使用権の承継については、民法の相続の規定が当然に適用されるものと解することはできない。そして、上記の場合における使用権の承継について、施行者が、法の規定及びその趣旨に違反しない限りにおいて、法29条1項、公営住宅法48条に基づき、改良住宅の管理について必要な事項として、条例で定めることができるものと解される。
そうすると、本件条例24条1項は、法の規定及びその趣旨に照らして不合理であるとは認められないから、法29条1項、公営住宅法48条に違反し違法、無効であるということはできない。
※判決文一部抜粋


【理由】
1.公営住宅の入居者が死亡した場合には、その相続人が公営住宅を使用する権利を当然に承継するものではないと解されるところ(最高裁平成2年(オ)第27号同年10月18日第一小法廷判決・民集44巻7号1021頁)、法の規定及びその趣旨に照らすと、国の補助を受けて建設された改良住宅の入居者が死亡した場合についても、公営住宅の場合と同様に、当該入居者の相続人が改良住宅の使用権を当然に承継すると解する余地はない。そうすると、本件条例24条1項は、法の規定の趣旨に違反するとはいえない。

2. 法18条は、改良住宅に入居させるべき者について、改良住宅への入居を希望し、かつ、住宅に困窮すると認められるものに限定しており、住宅地区改良事業に伴い住宅を失った者の全てについて、無条件に改良住宅への入居を認めるものではない。そして、国の補助を受けて建設された改良住宅の入居者は、当該改良住宅に引き続き3年以上入居している場合において政令で定める基準を超える収入のあるときは、当該改良住宅を明け渡すように努めなければならないともされている(法29条3項、旧公営住宅法21条の2第1項)。

3. 国の補助を受けて建設された改良住宅の入居者は、当該改良住宅に引き続き3年以上入居している場合において政令で定める基準を超える収入のあるときは、当該改良住宅を明け渡すように努めなければならないともされている(法29条3項、旧公営住宅法21条の2第1項)。また、改良地区内の居住者が従前の住宅につき有していた所有権その他の権利に対しては、施行者が金銭をもって補償することが予定されている(法11条1項、16条1項参照)
※判決文一部抜粋

■要約
→無し


【ポイント】
判決文にも明記されていますが、本制度は「住宅地区改良事業の施行に伴い住宅を失った者」を改良住宅に入居させることは、元々住んでいた住宅の権利に対する保障ではなく、あくまで生活に対する安定化を図ったものだと述べています。
そのため、相続において本住宅を使用する権利を当然に継承する訳ではない、と結論付けています。

【最後に】
本訴えは各自治体の条例が関係するため、一概に他地区では判断できない部分があります。最後に本訴えで関係した法令及び条例を記載しておきます。

■京都市市営住宅条例(第24条1項)
市営住宅の入居者が死亡し、又は当該市営住宅から退去した場合において、その死亡時又は退去時に当該入居者と同居していた者(入居承認に際して同居を認められた者又は前条の規定により承認を受けて同居している者(以下「同居者」という。)に限る。)は、別に定めるところにより、市長の承認を受けて、引き続き、当該市営住宅に居住することができる。

■住宅地区改良法(第18条)
施行者は、次の各号に掲げる者で、改良住宅への入居を希望し、かつ、住宅に困窮すると認められるものを改良住宅に入居させなければならない。
一 次に掲げる者で住宅地区改良事業の施行に伴い住宅を失つたもの
イ 改良地区の指定の日から引き続き改良地区内に居住していた者。ただし、改良地区の指定の日後に別世帯を構成するに至った者を除く。
ロ イただし書に該当する者及び改良地区の指定の日後に改良地区内に居住するに至った者。ただし、政令で定めるところにより、施行者が承認した者に限る。
ハ 改良地区の指定の日後にイ又はロに該当する者と同一の世帯に属するに至った者
二 前号イ、ロ又はハに該当する者で改良地区の指定の日後に改良地区内において災害により住宅を失つたもの
三 前二号に掲げる者と同一の世帯に属する者

■公営住宅法(第四十八条)
事業主体は、この法律で定めるもののほか、公営住宅及び共同施設の管理について必要な事項を条例で定めなければならない。

■民法896条
相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。