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相続人による死亡者のじん肺管理区分決定処分取消等請求事件

【裁判】
事件番号:平成27(行ヒ)349
事件名:じん肺管理区分決定処分取消等請求事件
裁判年月日:平成29年4月6日
法廷名:最高裁判所第一小法廷
裁判種別:判決
結果:その他


【訴訟経緯】
じん肺管理1の認定を受け、その取消を求めた被相続人が死亡した場合、その権利を遺族が継承できるかを求めた裁判。

■具体的背景
・Aは15年に渡り、建物の設備管理等の作業に従事した者である。
・Aは平成21年6月27日に退職し、じん肺健康診断を受けたところ,じん肺管理区分4相当と診断され、福岡労働局長に申請を行う。
・平成21年11月2日、福岡労働局長は、Aが管理1に該当する旨の決定をAに通知。
・Aは厚生労働大臣に対し、本件決定の取消しを求めて審査請求をしたが、厚生労働大臣は、平成22年3月31日、同審査請求を棄却する旨を裁決した。
・Aは平成22年9月29日に本件決定及び本件裁決の取消し並びに国家賠償を求めて訴訟を提起したが、第1審口頭弁論終結後の平成25年9月14日に死亡してしまう。
・Aの推定相続人である「配偶者及び子ら」が、本件を継承し、訴えを続ける。


【判決】
判決、本件を原審に差し戻し。


【判決趣旨】
管理1に該当する旨の決定を受けた労働者等が当該決定の取消しを求める訴訟の係属中に死亡した場合には、当該訴訟は、当該労働者等の死亡によって当然に終了するものではなく、当該労働者等のじん肺に係る未支給の労災保険給付を請求することができる労災保険法11条1項所定の遺族においてこれを承継すべきものと解するのが相当である。
※判決文一部抜粋


【理由】
都道府県労働局長から所定の手続を経て管理1に該当する旨の決定を受けた労働者等は、これを不服として、当該決定の取消しを求める法律上の利益を有するところ、労災保険法11条1項所定の遺族は、死亡した労働者等が有していたじん肺に係る労災保険給付の請求権を承継的に取得するものと理解することができること(同項及び同条2項)を考慮すると、このような法律上の利益は、当該労働者等が死亡したとしても、当該労働者等のじん肺に係る未支給の労災保険給付を請求することができる上記遺族が存する限り、失われるものではないと解すべきである。
※判決文一部抜粋

■要約
→亡くなった方が労働保険を請求することができる限り、その遺族にもその権利が失われることがない。


【ポイント】
本件のように、管理1に該当する旨の決定を受けた当該労働者等がその取消訴訟を提起した後に死亡した場合に、上記遺族に訴訟承継を認めないときは、当該遺族は当該労働者等のじん肺に係る労災保険給付を請求したとしても、管理1に該当する旨の決定が存する以上、当該労災保険給付の不支給処分を受けることが確実であり、改めてこれに対する取消訴訟を提起することを余儀なくされることに照らしても、合理性を有するということができる。
※判決文一部抜粋

■要約
→本件のように、遺族に訴訟承継を認めない時、じん肺管理区分管理1に該当する決定が存在する以上、改めてこれに対する取消訴訟を提起するということは合理性を有すると解釈できる。(遺族は取消訴訟を提起する権利を有すると解釈できる)


【最後に】
じん肺に関する訴えということで、一見、相続とは無縁に感じますが判決文にもあるとおり、被相続人(亡くなった方)の権利は相続人にも継承されるという点は、他の相続案件にも通じる箇所があり、考えさせられる判決です。