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遺言を撤回する遺言書を、更に撤回する遺言書が見つかった場合の裁判

【裁判】
事件番号:平成7(オ)1866
事件名:遺言無効確認等
裁判年月日:平成9年11月13日
法廷名:最高裁判所第一小法廷
裁判種別:判決
結果:棄却


【訴訟経緯】
遺言を撤回する遺言書を、更に撤回する遺言書が見つかった場合の裁判。

■具体的背景
・昭和62年12月6日、亡きDは自筆証書遺言にて、その遺産の大半を被上告人に相続させる遺言書を作成した。(A遺言)
・平成2年3月4日、Dは自筆証書遺言にて、被上告人に相続させる遺産を減らし、A遺言の内容より多くの遺産を被上告人以外の者に相続させる内容の遺言(B遺言)をした。B遺言の末尾には、「この遺言書以前に作成した遺言書はその全部を取り消す」との記載がある。
・平成2年11月8日、更にDは、自筆証書遺言にて「Gに渡した遺言状は全て無効としH弁護士のもとで作成したものを有効とする」と記載された遺言(C遺言)をした。C遺言にいう「Gに渡した遺言状」とはB遺言書を指し、「H弁護士のもとで作成したもの」とはA遺言書を指している。
・Dの死後、被上告人はA遺言に基づき、Dの相続財産である各不動産の所有権移転登記を行った。
・本裁判は、上告人らが、B遺言によりA遺言が失効したとして、A遺言の無効確認を求めるとともに、右各不動産について法定相続分に従った共有登記への更正登記手続を求めるものである。


【判決】
上告を棄却。


【判決趣旨】
前記一の事実関係によれば、亡Dは、B遺言をもってA遺言を撤回し、更にC遺言をもってB遺言を撤回したものであり、C遺言書の記載によれば、亡Dが原遺言であるA遺言を復活させることを希望していたことがあきらかであるから、本件においては、A遺言をもって有効な遺言と認めるのが相当である。
※判決文抜粋


【理由】
遺言(以下「原遺言」という。)を遺言の方式に従って撤回した遺言者が、更に右撤回遺言を遺言の方式に従って撤回した場合において、遺言書の記載に照らし、遺言者の意思が原遺言の復活を希望するものであることが明らかなときは、民法1025条ただし書の法意にかんがみ、遺言者の真意を尊重して原遺言の効力の復活を認めるのが相当と解される。
※判決文抜粋


【ポイント】
※民法1025条
前三条の規定により撤回された遺言は、その撤回の行為が、撤回され、取り消され、又は効力を生じなくなるに至ったときであっても、その効力を回復しない。ただし、その行為が詐欺又は強迫による場合は、この限りでない。


【最後に】
この遺言の判決は現時点(平成29年8月21日現在)においても有効な判決です。遺言書を撤回する場合は、弁護士に確認の上、参考にすべき判決でしょう。