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相続財産の賃借権を有しているか確認を求めた裁判

【裁判】
事件番号:平成7(オ)1993
事件名:  土地賃借権確認、借地権確認
裁判年月日:平成10年2月27日
法廷名:最高裁判所第二小法廷
裁判種別:判決
結果:破棄自決


【訴訟経緯】
被上告人が被相続人との間で締結した賃貸借契約に基づく賃借権を有することの確認を求める訴え。

■具体的背景
・Dは平成3年7月3日に他界した。
・Dの相続人は、長男E、二男A、三男被上告人、長女Fの4人である。
・Dは公正証書遺言を作成しており、その中で、本件土地を持分1/2を長男Eに、持分1/2を被上告人に、二男Aを遺言執行者に指定する旨記載がある。
・被上告人は本件土地を占有している。
・本件は遺言執行者であるAに対し、被上告人がD被相続人との間で締結した賃貸借契約に基づく賃借権を有することの確認を求める訴えである。


【判決】
原審の判決を棄却し、第一審判決を取り消し。


【判決趣旨】
原審では、上告人(遺言執行者)に被告適格があるものとし、これを認容した第一審判決の結論を維持して上告人の控訴を棄却したが、本判決において、被告適格があるのは、遺言執行者ではなく長男Eであると判決した。


【理由】
遺言執行者があるときでも遺言書に当該不動産の管理及び相続人への引渡しを遺言執行者の職務とする旨の記載があるなどの特段の事情のない限り、遺言執行者は、当該不動産を管理する義務や、これを相続人に引き渡す義務を負わないと解される
※判決文抜粋


【ポイント】
遺言執行者があるときであっても、遺言によって特定の相続人に相続させるものとされた特定の不動産についての賃借権確認請求訴訟の被告適格を有する者は、右特段の事情のない限り、遺言執行者ではなく、右の相続人であるというべきである。
※判決文抜粋


【最後に】
本件の裁判は、財産そのものを巡る訴えではなく、「その権利は自分のもので間違いありませんよね?・その権利を自分は有していますよね?」と確認を求める訴えです。この訴えが認められて、初めて、法律上その権利が自分にあることに認められます。但し、本件の様に、請求相手が間違っていると判断されると本判決のように、本来の相手に対し請求しなおしが発生するため、弁護士に相談しながらすすめるべき事案と言えます。