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遺留分減殺請求権の時効が有効かどうか問われた判決

【裁判】
裁判年月日: 平成26年3月14日
法廷名: 最高裁判所第二小法廷
裁判種別: 判決
結果: 棄却差戻


【時系列】
Bは平成20年10月22日に死亡し、その財産を全て長男に相続させる遺言を遺した。その時点でAは本件が遺留分を侵害していることを認知していた。
その後、Aと弁護士のCが任意後見契約を締結しようとしていたところ、平成21年6月30日、弁護士CがAは認知症で自己の財産を管理・処分することができないとして、上告人について任意後見監督人の選任の申立てをした。
上告人が平成21年7月24日に公証人の認証を受けた書面によって上記任意後見契約を解除したため、その後、上記申立ては取り下げられた。
Bの養子であり、Aの二男は、静岡家庭裁判所沼津支部に対し、上告人について後見開始の審判の申立てを行い、平成22年4月24日、上告人について後見を開始し、成年後見人としてX弁護士を選任する旨の審判が確定した。
その後、Aの青年後見人であるX弁護士がAの遺留分減殺請求権を行使し、本裁判に至る。尚、原審では、遺留分の時効が成立し、遺留分は行使できないと判決されている。


【判決】
原審に破棄差戻。時効は完成していない


【裁判趣旨】
原審では、時効期間満了前に後見人開始の審判を受けていない者に民法158条1項は適用されないとし、時効は消滅したと判決したが、上告人Aは民法158条1項に規定される「青年被後見人」に該当しない。但し、上記法律は「時効中断の措置を取れない者を保護しようとする」内容と捉えられるから、上告人Aに類推適用を認める余地がある。


【理由】
時効の期間の満了前6箇月以内の間に精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者に法定代理人がない場合において、少なくとも、時効の期間の満了前の申立てに基づき後見開始の審判がされたときは、民法158条1項の類推適用により、法定代理人が就職した時から6箇月を経過するまでの間は、その者に対して、時効は完成しないと解するのが相当である。
※判決文一部抜粋


【ポイント】
「上告人Aが後継人を付けなければならない状態であるか?」
「上告人Aが青年被後見人として認められるか?」
この2点が認められれば、時効は完成しない。

■民法158条1項
「時効の期間の満了前六箇月以内の間に未成年者又は成年被後見人に法定代理人がないときは、その未成年者若しくは成年被後見人が行為能力者となった時又は法定代理人が就職した時から六箇月を経過するまでの間は、その未成年者又は成年被後見人に対して、時効は、完成しない。」

■民法1042条
「減殺の請求権は,遺留分権利者が、相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知った時から1年間行使しないときは、時効によって消滅する。相続開始の時から10年を経過したときも、同様とする。」

また、遺言書指定の遺産分割→「遺贈」、遺言書による遺産分割の指定がない相続→「相続」と呼称するのもポイントなります。