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土地の境界を巡り、隣接地所有者と同調しなかった相続人を訴えた裁判

【裁判】
事件番号:平成9(オ)873
事件名: 土地境界確定請求事件
裁判年月日:平成11年11月9日
法廷名:最高裁判所第三小法廷
裁判種別:判決
結果:棄却


【訴訟経緯】
相続した土地の境界が確定しておらず、その境界確定に同調しなかった相続人と隣接地所有者の双方を同時に訴えるか確認を求めた裁判。

■具体的背景
・Mの相続人らである被上告人(計4名)は、Mの相続財産である本件土地を各持分1/4ずつで相続した。
・本件土地は上告人が所有している土地に北側と南側が隣接しており、その境界確定は行われていない。
・被上告人らにおいてMの遺産分割協議が整わず、被上告人B1を相手方にその他被上告人3名が家庭裁判所で審議したところ、本件土地と上告人所有地との境界が確定していないため、手続が進行しないでいる。
・上記の理由により、本件土地と上告人所有地との境界を確定するために、被上告人B1と共同して、上告人を被告として境界確定の訴えを提起しようとしたが、被上告人B1がこれに同調しなかったことから、同人及び上告人を被告として、訴えを提起した。
・本裁判は土地の境界確定を巡り、訴えに同調しなかった被上告人B1と隣接の地の所有者である上告人双方を同時に訴えることが可能かどうかを求めた裁判である。


【判決】
上告人の訴えを棄却、判決。


【判決趣旨】
第一審において、土地の共有者が隣接する土地との境界の確定を求める訴えは共有者全員が原告となって提起すべきものであると主張し、本件訴えの却下を求めた。原審は、本件訴えを適法なものであるとし、被上告人B1も被控訴人の地位に立つとした上で、被上告人B2らと上告人との間及び被上告人B2らと同B1との間で、それぞれ第一審と同一の境界を確定した。
本判決においてもこれを支持。上告人の訴えを棄却。


【理由】
共有者のうちに右の訴えを提起することに同調しない者がいるときには、その余の共有者は、隣接する土地の所有者と共に右の訴えを提起することに同調しない者を被告にして訴えを提起することができるものと解するのが相当である。
けだし、境界確定の訴えは、所有権の目的となるべき公簿上特定の地番により表示される相隣接する土地の境界に争いがある場合に、裁判によってその境界を定めることを求める訴えであって、所有権の目的となる土地の範囲を確定するものとして共有地については共有者全員につき判決の効力を及ぼすべきものであるから、右共有者は、共通の利益を有する者として共同して訴え、又は訴えられることが必要となる。しかし、共有者のうちに右の訴えを提起することに同調しない者がいる場合であっても、隣接する土地との境界に争いがあるときにはこれを確定する必要があることを否定することはできないところ、右の訴えにおいては、裁判所は、当事者の主張に拘束されないで、自らその正当と認めるところに従って境界を定めるべきであって、当事者の主張しない境界線を確定しても民訴法二四六条の規定に違反するものではないのである
※判決文抜粋


【ポイント】
■原則論
境界の確定を求める訴えは、隣接する土地の一方又は双方が数名の共有に属する場合には、共有者全員が共同してのみ訴え、又は訴えられることを要する固有必要的共同訴訟と解される(最高裁昭和四四年(オ)第二七九号同四六年一二月九日第一小法廷判決・民集二五巻九号一四五七頁参照)
※判決文抜粋


【最後に】
土地の売買或いは賃貸を行う方であれば、土地の境界確定は必須項目であり、行うことが当たり前のように感じるものですが、不動産調査を行うと、意外にも境界確定を行っていないケースの方が多数を占めます。その理由として多く挙げられるのが「境界確定を行っていたつもりが、実際に調べたら、実は行っていなかった」というものです。相続においても土地の境界確定が行われていないと、正確な評価額が分からない為、不安な方は一度調べてみては如何でしょうか?