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不動産を、本来の持分通りに更正登記できるかを求めた裁判

【裁判】
事件番号:平成11(オ)773
事件名: 所有権移転登記抹消登記手続請求事件
裁判年月日:平成12年1月27日
法廷名:最高裁判所第一小法廷
裁判種別:判決
結果:その他


【訴訟経緯】
一部の相続人が勝手に所有権移転登記した不動産を、本来の相続分通りに更正登記できるかを求めた裁判。

■具体的背景
・Dは昭和27年1月24日に他界した。
・Dの相続人は、Dの妻E(昭和52年9月11日 他界)、二男F、長女G、被上告人である三男、二女Hであった。
・二男Fは平成5年3月4日に他界し、上告人ら(A1とA2)がその相続人である。
・A1とA2は平成5年8月5日を以って、以下の不動産所有権移転手続きを行う。
・「昭和27年1月24日F相続、平成5年3月4日相続」を原因として、Dから上告人A1に対する所有権移転登記がされている(本件登記(1)と呼称)
・同じく、「昭和19年2月24日D家督相続、昭和27年1月24日F相続、平成5年3月4日相続」を原因として、Dの先代Iから上告人A1に対する所有権移転登記がされている(本件登記(2)と呼称)
・同じく平成5年8月5日受付により、上告人A1のため所有権保存登記がされている(本件登記(3)と呼称)
・「昭和27年1月24日F相続、平成5年3月4日相続」を原因として、Dから上告人A2に対する所有権移転登記がされている(本件登記(4)と呼称)
・被上告人は、これらの移転登記に対し、Fの持分は3/4、被上告人の持分を1/4とする更正登記手続きをするよう求めた。


【判決】
上告人の上告内容を棄却、判決。


【判決趣旨】
上告人らは、本件不動産(1)ないし(4)につきFの単独所有とする旨の遺産分割協議が成立し、又は取得時効が完成した旨主張したが、原審は、右主張はいずれも認められないとして、被上告人の更正登記手続請求を認容。本判決においても上告人の請求を棄却したが、原審の判決内容は棄却した。
※一部判決文抜粋


【理由】
更正登記は、錯誤又は遺漏のため登記と実体関係の間に原始的な不一致がある場合に、その不一致を解消させるべく既存登記の内容の一部を訂正補充する目的をもってされる登記であり、更正の前後を通じて登記としての同一性がある場合に限り認められるものである。
従って、したがって、原判決中、本件不動産(1)ないし(4)についての更正登記手続請求に関する部分は、主文第一項に記載のとおり変更することとし、上告人A3の上告並びに同A1及び同A2のその余の上告を棄却すべきである。
※判決文抜粋


【ポイント】
登記は、その不動産の所有権の移転を正確に、事実のみを残すことを目的としており、更正(修正)は原則認められていません。よって、本件の最高裁判決では、本来の法定相続分通りに過去の登記を修正するのではなく、現在の登記(A1、A2の完全所有)から、3/4持分→A1orA2、1/4持分→被上告人とする新たな登記変更するよう判決を下しています。


【最後に】
不動産の所有権移転手続きは、原則、過去に遡って修正することを許していません。例えば、Aが他界し、Bがその不動産を相続し、そのBが亡くなりCがその不動産を相続した場合、不動産登記はA→B→Cと順に登記移転されなければなりません。しかし、今回の判例のように、Aの相続が発生し、Bの他にB2という相続人がいた場合、その更正登記は「A→B、B2」ではなく、「A→B→C→B2」にしなさいというのが、今回の判決です。一見すると面倒なように思えますが、その主張内容が正しくとも、その方法について最高裁で否認されるというのはよくあるケースです。従って、不動産の所有権移転争いの場合は、更正の仕方まで弁護士を踏まえ、考える必要があるでしょう。