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特別受益単独で法律上の権利関係として成り立たせることは可能かを求めた裁判

【裁判】
事件番号:平成11(受)110
事件名:具体的相続分確認請求事件
裁判年月日:平成12年2月24日
法廷名:最高裁判所第一小法廷
裁判種別:判決
結果:棄却


【訴訟経緯】
特別受益単独での権利関係を成り立たせることは可能かを求めた裁判。


【判決】
上告人の上告内容を棄却、判決。


【判決趣旨】
共同相続人間において具体的相続分についてその価額又は割合の確認を求める訴えは、確認の利益を欠くものとして不適法であると解すべきである。
※判決文抜粋


【理由】
具体的相続分は、このように遺産分割手続における分配の前提となるべき計算上の価額又はその価額の遺産の総額に対する割合を意味するものであって、それ自体を実体法上の権利関係であるということはできず、遺産分割審判事件における遺産の分割や遺留分減殺請求に関する訴訟事件における遺留分の確定等のための前提問題として審理判断される事項であり、右のような事件を離れて、これのみを別個独立に判決によって確認することが紛争の直接かつ抜本的解決のため適切かつ必要であるということはできない。
※判決文抜粋


【ポイント】
※民法903条
共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、前三条の規定により算定した相続分の中からその遺贈又は贈与の価額を控除した残額をもってその者の相続分とする。


【最後に】
今回の裁判の趣旨は、遺産配分において、「生前贈与」が、自己の相続分に組み込まれる「特別受益」という法律に対し、それ単独で権利関係として成り立たせることは可能かどうかを裁判所に求めた事案です。最高裁の判断としては、あくまでも遺産配分においての割合を示すものであって、それ単独で権利関係を成り立たせることはできないと判断しています。これは、養子や株式に「不存確認」という、存在がないことだけを確認する訴えがあるように、法律や裁判の中には、ある権利の具体的数字や事実を導き出す際に、その範囲の数字や事実の有無だけを求める訴えがあります。分かりやすく言えば、ある権利を行使するために、その証拠の範囲・有用性をだけを求める訴えです。当然、その証拠の範囲や有用性のみ有効かどうか確認している訳ですから、その証拠だけでは何も効力を発揮しません。あくまで別の権利を行使する際に、有用になってくるのです。今回の特別受益に関する権利も同じことだと判決されています。