会社イメージ

時効取得により被相続人が占有した不動産の登記移転を求めた裁判

【裁判】
事件番号:平成11(受)223
事件名: 土地所有権移転登記手続請求事件
裁判年月日:平成13年7月10日
法廷名:最高裁判所第三小法廷
裁判種別:判決
結果:破棄差戻


【訴訟経緯】
亡き父が20年間占有した土地建物は、時効取得により、相続人に移転登記手続きが行えるかどうかを求めた裁判。

■具体的背景
・上告人は昭和35年6月28日、本件不動産の所有権移転手続きを行った。
・上告人の兄であるDは、昭和35年6月28日、本件不動産(土地・建物)に居住占有し、昭和55年6月28日においても占有していた。
・Dは昭和62年12月19日に死亡し、その法定相続人は、Dの妻とその子らである長男、次男(被上告人)、長女の計4人である。
・被上告人は、本件不動産の全部につき、取得時効による所有権移転手続きを上告人に求めた。


【判決】
原審の判決を破棄差し戻し。


【判決趣旨】
原審においては、Dが本件不動産の所有権を時効取得したとして,本件不動産の全部につき被上告人への所有権移転登記手続を求める請求を全部認容すべきものとした。しかし、本裁判においては、時効の完成を認めつつも、その範囲において、原審の判決を破棄差戻を下した。


【理由】
時効の完成により利益を受ける者は自己が直接に受けるべき利益の存する限度で時効を援用することができるものと解すべきであって、【要旨】被相続人の占有により取得時効が完成した場合において、その共同相続人の一人は、自己の相続分の限度においてのみ取得時効を援用することができるにすぎないと解するのが相当である。 これを本件についてみると、Dの法定相続人の間で本件不動産の全部を被上告人が取得する旨の遺産分割協議が成立したなどの事情があれば格別、そのような事情がない限り、被上告人は、Dの占有によって完成した取得時効の援用によって、本件不動産の全部の所有権を取得することはできないものというべきである。
※判決文抜粋


【ポイント】
取得時効による受ける範囲は、自己が直接利益を受ける範囲。


【最後に】
相続裁判ケースにおいてよく目にするのが、「不動産」の取得(取得範囲含む)に関する内容です。ここで、不動産取得権利者の取得範囲(持分)が少なくなるケースに、遺産分割が確定しておらず、権利主張者にその権利がないため、取得権利が認められない(或いは、取得範囲を減殺される)ことです。相続は、「遺言書による指定」もしくは「遺産分割が確定」して「初めて相続人がその権利を持つ」ことを認められます。この点、誤解せずポイントして覚えておく必要があるでしょう。