会社イメージ

有限会社の遺産分割中である株式の決議権取消を求めた判決

【裁判】
裁判年月日: 平成27年2月19日
法廷名: 最高裁判所第一小法廷
裁判種別: 判決
結果: 棄却


【訴訟経緯】
原審の上告人は特例有限会社で、発行株式数は3000株。内2000株を保有する役員Aが亡くなり、Aの相続人である被上告人XとYが1/2の割合でこの株式を共同相続した。Aの遺産は未分割のままであり、本題の焦点となる2000株の株式はXとYの共有状態のままである。
Yは、共有状態のままである本件株式を臨時株主総会において、全株式(2000株)の議決権の行使をした。一方、被上告人Xは、その招集通知を受けたが、上告人(特例有限会社)に対し、本件総会には都合により出席できない旨及び本件総会を開催しても無効である(会社法106条)旨を通知し、本件総会には出席しなかった。ところが、本株主総会で代表取締役の変更と本店を移転する決議決定がなされ、その決議決定の無効を求める裁判。


【判決】
被上告人Xの主張を支持し、上告人(特例有限会社)を棄却


【裁判趣旨】
上告人は会社法106条「但し書き」「株式会社が当該権利を行使することに同意した場合は、この限りではない」の通り、適法であると主張しているが、共有に属する株式について会社法106条本文の規定に基づく指定及び通知を欠いたまま当該株式についての権利が行使された場合において、当該権利の行使が民法の共有に関する規定に従ったものでないときは、株式会社が同条ただし書の同意をしても、当該権利の行使は適法となるものではないと解するのが相当である。


【理由】
特段の事情がない限り民法252条本文により、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決せられるものと解するのが相当。
本件はその特段の事情である「株式を処分し,又は株式の内容を変更すること」に該当しないため、株式の管理に関する行為として民法252条本文により、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決せられるものと解する。従って、民法の共有に関する規定に従ったものではないから、上告人がこれに同意しても適法となるものではない。
※判決文抜粋


【ポイント】
会社法106条ただし書き「ただし、株式会社が当該権利を行使することに同意した場合は、この限りではない」が、どのような状況に限り適用できるか?
※会社法106条本文「株式が二以上の者の共有に属するときは、共有者は、当該株式についての権利を行使する者一人を定め、株式会社に対し、その者の氏名又は名称を通知しなければ、当該株式についての権利を行使することができない」


【最後に】
自社株などの相続において遺言書を活用しなければ、本裁判のように株式は共有財産となります。遺言書による株式受取人の指定を一考する良い判例と言えるのではないでしょうか?