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遺言書指定の相続財産を債権者に差し押さえられた裁判

【裁判】
事件番号:平成11(受)271
事件名:各第三者異議事件
裁判年月日:平成14年6月10日
法廷名:最高裁判所第二小法廷
裁判種別:判決
結果:棄却


【訴訟経緯】
遺言書指定により相続した不動産が、債権者によって差し押さえられたことに対し、異議を申し立てた裁判。

■具体的背景
・Dの妻(被上告人)は、Dが生前に残した遺言書「不動産の権利を全てDに相続させる」に従い、該当不動産ないし、持分の権利を取得した。
・本件法定相続人の1人であるEは、債権者(上告人)に対して、法定相続分の相続財産を差し押さえられた。
・差し押さえされた財産は、遺言書で指定された被上告人が相続する不動産及び持分であり、上告人はEを代位して、当該不動産及び持分の差し押さえ及び強制競売の申し立てを行った。
・この仮差押え及び差押えがされたところ、被上告人は、この仮差押えの執行及び強制執行の排除を求めて第三者異議訴訟を提起した。

遺言書指定により相続した不動産が、債権者によって差し押さえられたことに対し、異議を申し立てた裁判。


【判決】
本件訴えを出訴期間経過後の訴えであるとして不適法却下した原審の判決を破棄差戻。上告人の申し立てを棄却判決。


【判決趣旨】
被上告人は,本件遺言によって取得した不動産又は共有持分権を、登記なくして上告人らに対抗することができる。
※判決文抜粋


【理由】
特定の遺産を特定の相続人に「相続させる」趣旨の遺言は、特段の事情のない限り、何らの行為を要せずに、被相続人の死亡の時に直ちに当該遺産が当該相続人に相続により承継される(最高裁平成元年(オ)第174号同3年4月19日第二小法廷判決・民集45巻4号477頁参照)。
※判決文抜粋


【ポイント】
遺言書の「相続させる」旨の効力。
※贈与させる、与えるでは効力が及ばない


【最後に】
相続において債権がある場合、或いは、債務者が財産を相続した場合、債権者にも債権を回収できる権利があります。よって、相続財産の内、プラスの財産より負債が多い場合、相続放棄した方が良い場合もあります。一方、債務者が相続によって財産を引き継いだ場合、当然、状況に応じて相続財産が差し押さえられます。その際、遺言書による遺産分割の指定がない場合、単純に相続財産分がこの分が差し押さえされると言われますが、正しい遺言書の活用による遺産分割の指定は、その指定方法に従った分しか、相続人には行き渡りません。ここで、重要になってくるのが「正しい遺言書の活用」です。遺言書にはいくつかのポイントがあり、その中で代表的なのが「○○に○○を相続させる」と明記することです。この文面が「与える」とか「贈与する」などの言葉になると、裁判によっては遺言書として有効ではないと判断される場合があります。遺言書の内容が適切ではないため、否認されるケースは多々あるため、弁護士等に判断を仰ぎながら作成する必要があるでしょう。