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相続人が株式発行会社に新株発行不存在確認の訴えを求めた裁判

【裁判】
事件番号:平成12(受)469
事件名:新株発行不存在確認請求事件
裁判年月日:平成15年3月27日
法廷名:最高裁判所第一小法廷
裁判種別:判決
結果:破棄差戻


【訴訟経緯】
被上告人である株式発行法人に対し、平成元年8月30日登記の3万株、及び、平成2年11月8日登記の7万株、双方について新株発行の不存在確認を求める裁判。

■具体的背景
・被上告人の株主であった甲は、平成4年11月12日に本件訴訟を提起したが、審議中の平成8年10月10日に他界してしまう。
・甲の法定相続人である上告人は、商法203条2項(株式が数人の共有に属するときは共有者は株主の権利を行使すべき者一人を定むることを要す。)に従って株主の権利を行使すべき者に指定され、本件訴訟の甲の地位を承継し、審議を継続することとなる。


【判決】
本件訴えを出訴期間経過後の訴えであるとして不適法却下した原審の判決を破棄差戻。


【判決趣旨】
新株発行不存在確認の訴えについては、商法に何ら規定がないが、商法280条ノ15以下に規定されている新株発行無効の訴えに準じて新株発行不存在確認の訴えを肯定すべきであり、そして、明文の規定がないにもかかわらず、新株発行無効の訴えに準じて新株発行不存在確認の訴えを認めるのであるから、同訴えについては、その性質に反しない限り新株発行無効の訴えに関する規定を類推適用するのが相当である。しかし、新株発行無効の訴えの出訴期間に関する規定については、これを類推適用すべきでなく、新株発行不存在確認の訴えに出訴期間の制限はないものと解するのが相当である。
※判決文抜粋


【理由】
「新株発行無効の訴え」は、その訴えが成立すると、その判決日以降、その発行株式は「無かった」ことにされ、該当株主や発行株式に影響を及ぼすが、「新株発行不存在確認の訴え」は「新株発行無効の訴え」と異なり、新株発行という事実がなかったことを「確認」する訴えであり、株式には影響を及ぼさないため、期間を設けることは合理性を欠く。


【ポイント】
■新株発行無効の訴え
無効の訴えが認められると、その判決日以降、その発行株式は「無かったこと」にされ、株主へは出資金が返還(会社法841条1項)され、株式を発行している場合は、発行会社が株主から返還を求めること会社法841条1項)になります。

■新株発行不存在確認の訴え
新株発行という事実がなかったことを「確認」するだけの訴えであり、訴えが認められただけでは、株式に影響は出ない。(あくまで「確認」の訴えだからである。)


【最後に】
よく、株式を後継者以外の親族にも相続させたい、というご相談を頂きますが、どんなに親族であっても、その会社の経営に携わっていなければ、もっと言えば経営の大変さを自身が経験していなければ、第三者にすぎません。企業が順風満帆であれば良いですが、そうでない時、英断が必要な時に、その方たちがきちんと理解してくれるか?その点まで検討してから株価対策は進める必要があるでしょう。