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相続税更正を求めたところ拒否され、その取り消しを求めた裁判

【裁判】
事件番号:  平成13(行ヒ)230
事件名: 処分取消請求事件
裁判年月日: 平成15年4月25日
法廷名: 最高裁判所第二小法廷
裁判種別: 判決
結果: 棄却


【訴訟経緯】
遺産分割協議を行い、相続税申告を行ったところ、遺産分割協議無効の訴えを起こされ、無効である判決を受けたために、相続税更正の手続きをおこなったが「更正する理由がない」と税務署から言い渡され、その取り消しを求めた裁判。

■具体的背景
・昭和60年10月、Dが他界した。その相続人は配偶者とその子である上告人Aほか子供3人である。
・昭和61年4月21日頃、Dの遺産分割協議が成立する。
・同年4月25日(法廷期限内)上告人Aは被上告人である税務署に課税価格3億6838万5000円、納税額1億6761万3500円とする相続税を申告を行い、さらに、同年7月3日、課税価格が変わらず,納税額を1億6796万2700円とする修正申告をした
・翌年である昭和62年9月4日、他の相続人が本件遺産分割協議は通謀虚偽表示により無効であると主張し、上告人に対しその訴えを提起する。
・上記訴えは、平成8年10月24日、上告人Aの主導の下に、配偶者に対する相続税額軽減規定の適用による利益を最大限に受けるべく、相続税の申告期限内に遺産分割が成立したことにするために、通謀の上仮装の合意として本件遺産分割協議を成立させたと認定して、他の相続人らの請求を認容する判決をし、平成9年3月13日これが確定する
・平成9年4月14日、上告人Aは上記判決を受け、被上告人である税務署に対し、国税通則法第23条第2項1号に基づき、相続税修正(課税価格を9751万6000円、納税額を4415万4300円)の更正請求を行ったが、同年6月30日、被上告人は「構成する理由がない」と処分し、現在に至る。


【判決】
上告人の請求を棄却、判決。


【判決趣旨】
上告人が、法23条1項所定の期間内に更正の請求をしなかったことにつきやむを得ない理由があるとはいえないから,同条2項1号により更正の請求をすることは許されないと解するのが相当である。
※判決文抜粋


【理由】
上告人は、自らの主導の下に、通謀虚偽表示により本件遺産分割協議が成立した外形を作出し、これに基づいて本件申告を行った後、本件遺産分割協議の無効を確認する判決が確定したとして更正の請求をしたため。
※判決文抜粋


【ポイント】
■国税通則法第23条第1項1号
当該申告書に記載した課税標準等若しくは税額等の計算が国税に関する法律の規定に従つていなかつたこと又は当該計算に誤りがあつたことにより、当該申告書の提出により納付すべき税額(当該税額に関し更正があつた場合には、当該更正後の税額)が過大であるとき。

■国税通則法第23条第2項1号
その申告、更正又は決定に係る課税標準等又は税額等の計算の基礎となつた事実に関する訴えについての判決(判決と同一の効力を有する和解その他の行為を含む。)により、その事実が当該計算の基礎としたところと異なることが確定したとき。 その確定した日の翌日から起算して二月以内


【最後に】
本件のポイントは、相続税減額のために上告人自らが通謀虚偽表示により本件遺産分割協議が成立した外形を成したことです。国税及び税務署は課税は全ての国民に平等に課税すべきと考えていますので、「相続税を下げたいから、申告期限後、通謀虚偽表示を装い、再度遺産分割を行った」というのは認めづらいのです。もし、ここに止む得ぬ事情、本件で言えば、上告人自らが通謀虚偽表示により本件遺産分割協議が成立した外形を成していなければ、判決はまた違ったでしょう。