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複数の遺言書が発見され、自己の相続分を求めた裁判

【裁判】
事件番号:  平成15(受)670
事件名:   所有権移転登記手続等,更正登記手続等請求事件
裁判年月日: 平成16年4月20日
法廷名: 最高裁判所第三小法廷
裁判種別: 判決
結果: その他


【訴訟経緯】
亡き父が残した遺言書が複数あり、他の相続人が父の遺産を全て受け継ぐとした内容の遺産分割及び取得は違法であり、自己が取得できた財産の移転手続きと不当利益の返還を求めた裁判

■具体的背景
・上告人と被上告人はAと妻Bの間の子であり、Aは平成9年1月に、妻Bは平成7年7月に他界した。
・Aは生前遺言書を残しており、被上告人に全ての財産を相続させる旨の遺言を昭和57年9月に公正証書遺言の方式で、平成4年に「遺言」と題する書面で財産を妻Bに相続させる旨を残し、平成7年4月に上告人に全ての財産を相続させる旨の遺言を残した。
・本件は、被上告人が単独で取得した各不動産につき、平成7年の遺言で上告人が全て取得したとして、その所有権の移転を求めると共に、Aの死後、被上告人Bが解約し支払いを受けたA名義の預金の不当利得の還元を求めた裁判


【判決】
上告人の主張を退けた原審の判決を一部棄却差戻。


【判決趣旨】
原審では「平成7年の遺言書は、有効な遺言書として認められず、預金の権利者は被上告人にあった」「本件相続について、遺産分割協議の成立や遺産分割審判の存在も認められないことから、遺産分割協議を求める事案である」「仮に平成4年の遺言書によって、昭和57年の遺言書の全てが取り消されたと見做されなかった場合、遺留分減殺請求権の行使によって取得できる財産があったとしても遺留分減殺請求権は時効により消滅している」と判断し、上告人に取得できる財産はないとしたが、本判決において一部を否認した。


【理由】
「共同相続人の1人が、相続財産中の可分債権につき、法律上の権限なく自己の債権となった分以外の債権を行使した場合に、当該権利行使は、当該債権を取得した他の共同相続人の財産に対する侵害となるから、その侵害を受けた共同相続人は、その侵害をした共同相続人に対して不法行為に基づく損害賠償又は不当利得の返還を求めることができるものというべきである。」※判決文抜粋
※単独所有権移転された不動産と預金について、不当利益の還元を求めた訴えた部分の原審の判決には異論が残る。


【ポイント】
第994条(遺言書の無効)
遺贈は、遺言者の死亡以前に受遺者が死亡したときは、その効力を生じない。

第1042条(遺留分減殺請求の時効)
減殺の請求権は、遺留分権利者が、相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知った時から一年間行使しないときは、時効によって消滅する。相続開始の時から十年を経過したときも、同様とする。


【最後に】
本件は遺留分の時効より、過去の最高裁の判例を重視され、もう一度、請求時効の内、一事項のやり直しを判決された事案です。