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遺産分割が完了しないまま、二次相続が発生した場合の特別受益を決定した判決

【裁判】
裁判年月日: 平成17年10月11日
法廷名: 最高裁判所第三小法廷
裁判種別: 決定
結果: 破棄差戻


【訴訟経緯】
甲が死亡し、その遺産分割が完了しないまま、甲の妻である乙が亡くなり、その子供である拮抗人と相手方が、乙から受けた特別受益を巡り、乙の唯一の相続財産である「不動産」の分配方法を争った裁判。

■具体的経緯
・甲が平成7年12月に、その妻である乙は平成10年4月にそれぞれ亡くなった。
・甲及び乙の相続人は、子供である拮抗人とその相手方XとY2である。
・甲の相続財産は不動産及び現金で、拮抗人と相手方Y2は、甲から特別受益を受けている。
・乙の相続財産は不動産のみだが、生前に公正証書遺言を作成し、その不動産を相手方Xに相続させる旨を記載している。
・Y2は、乙から生前に特別受益を受けていた。
・本裁判は、拮抗人及び相手方X、Y2が、それぞれの取り分を巡って対立したものである。


【判決】
乙の遺産を存在しないとした原審を破棄差戻。


【判決趣旨】
原審では、「甲の遺産分割が未完了のままであるということは、甲から乙への相続分というのは、あくまで権利であり、具体性を持たないものである。そうなると、甲から乙への相続財産は無かったと判断できるから、乙に関する遺産分割の申し立ては不適切である。よって、甲の相続財産に関わる特別受益のみ持ち戻して算出するのが妥当」と判決したが、この部分を破棄差戻。


【理由】
遺産は、相続人が複数いて、それが当然に分割されるものでない時は共同相続人間の共有となる。共有物ということは「民法249条」の規定に該当し、そうなると、共有権は実態上の権利となって、遺産分割の対象となると言える。本件は、甲の遺産分割が未完了のまま、乙が亡くなったというのだから、乙は甲の遺産の法定相続分までの共有権を有しており、これは甲の遺産と言えるものである。よって、乙の相続人の中から特別受益を受けた者がいる時は、その持ち戻しを行って具体的相続分を計算しなければならない。


【ポイント】
民法249条
「各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができる。」


【最後に】
一次相続の遺産分割が纏まらないまま、二次相続が発生するケースは多々あります。そういった場合の基準とも言えるべき内容がこの判決と言えるでしょう。