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遺産分割が無効だとして、土地の所有権移転を求めた判決

【裁判】
裁判年月日: 平成17年12月15日
法廷名: 最高裁判所第一小法廷
裁判種別: 判決
結果: 破棄差戻


【訴訟経緯】
土地の所有権移転を求めた裁判。

■具体的経緯
・昭和44年にDが死亡、相続人は妻Bとその子である「上告人とF」
・平成9年にFが死亡し、その相続人は妻とその子である「被上告人とその他5の子共」
・焦点となる土地は昭和44年に相続を原因として、Dから被上告人に移転登記されている
・本訴訟は、上告人が被上告人に対し、前述の土地の所有権移転手続きと抹消登記手続きを求める訴えである。
・尚被上告人は、上告人を含むDの相続人達の間で、本件各土地をFが取得する旨の遺産分割協議が成立したと主張している。


【判決】
D及びFの遺産分割協議が認められないとした原審の判決を破棄差戻。


【判決趣旨】
原審が主張する更正登記は、錯誤・遺漏のため、現実と実態関係に原始的な不一致が認められる場合のみ、登記の更正を認めており、この条件として、更正の前後を通じて登記としての同一性がある場合に限り認められるものである。しかし、原審が示した更正内容では、更正の前後で登記の同一性を欠いてしまう。従って、被上告人の主張する遺産分割協議の成立が認められない限り、本件登記は実体関係と異なる登記であり、これを是正する方法として更正登記手続によることができないのであるから、上告人は,被上告人に対し、本件各土地の共有持分権に基づき本件登記の抹消登記手続をすることを求めることができる。


【理由】
登記更正の同一性に欠くため。
原判決が判示する更正登記内容は、登記の名義人を被上告人とする登記を、①登記名義人を被上告人が含まれないDの相続人とする登記と、②登記名義人をFの相続人とする登記に更正するというものである。上記①の登記は本件登記と登記名義人が異なることになるし、更正によって登記の個数が増えることにもなるから、本件登記と更正後の登記とは同一性を欠くものといわざるを得ない。従って、登記の更正は行えないというべきである。
※判決文抜粋


【ポイント】
原審の判決内容が「登記の更正ル-ル」に矛盾するため、行えないということ。また、本件遺産分割がそもそも成立しているのか、原審で審議していないので、そこから審議し直すこと。


【最後に】
登記の原則は、所有権の移転を記録として残すことであり、そこには細かなルールが存在します。仮に現在の所有者と別の所有者が所有していると判決されても、その登記移転内容が登記の原則に則っていなければ、その移転は認められません。登記移転の内容について最高裁が原審へ差し戻す判断が多いことも覚えておくと良いでしょう。