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相続財産である「杣山の分配金」の支払いを求めた判決

【裁判】
裁判年月日: 平成18年3月17日
法廷名: 最高裁判所第二小法廷
裁判種別: 判決
結果: その他


【訴訟経緯】
入会制である杣山の補償金が支払われなかったとして、その未払い相当額を相続人が求めた訴え。

■具体的経緯
・A部落の共有財産であった杣山は、部落の村民かつその一家の主のみに、伐採許可を与えていた土地であった。
・明治時代になり、その土地の一部がA部落の公有地となり、残りが部落代表者の個人名で登記された。
・本杣山は、同部落の条例により、入会制となるが、公有地の入会規則と個人名義の土地の規則が同一であり、平成12年5月、両者が合併して運営団体である被上告人が設立された。
・本入会地は、第2次世界大戦後、アメリカ合衆国の駐留軍の用に供するために使用され、その賃料は、運営団体である被上告人により収受・管理され、その一部が入会権者である被上告人の構成員らに対し、補償金として分配されている。
・本入会制は、入会権者の資格を世帯主及び男子孫に限り、A部落民以外の男性と婚姻した女子孫は離婚して旧姓に復しない限り資格を認めないとするなどの規則があった
・本件は、女子孫である上告人ら(入会権を有する相続人)が、本入会規則は法令上無効であり、平成4年度から平成14年度までの補償金として各306万円の支払いを求めた事案である。


【判決】
運営団体である被上告人の主張を支持した原審の判決を一部棄却、差戻。


【判決趣旨】
入会制の規定は、地方の習慣に従うものであり、本規定は合理性がある。しかし、本件慣習のうち、男子孫要件は、専ら女子であることのみを理由として女子を男子と差別したものというべきであり、遅くとも本件で補償金の請求がされている平成4年以降においては、性別のみによる不合理な差別として民法90条の規定により無効であると解するのが相当である。


【理由】
・男子孫要件は、団体の統制という観点から見ても、各世帯間の平等という点から見ても何ら合理性を有しない。この事は、同様の杣山を入会制とする他団体を見ても、男子孫限定にしていないケースもある。
・女子の入会権者の資格について一定の配慮をしているが、これによって男子孫要件による女子孫に対する差別が合理性を有するものになったということはできない。

以上のことから、男女の本質的平等を定める日本国憲法の基本的理念に照らしても、入会権を別異に取り扱うべき合理的理由を見いだすことはできないため、本件部分を原審に差し戻す。


【最後に】
日本の風習である入会制の規約は日本古来の風習として認めつつも、その権利において男女差がある部分のみを否認しているというのが本判決の要点です。相続財産としてこの様な古来の風習に起因する権利財産は、数が少なくなって来ているとはいえ、実在していることも事実ですから、その点も含め遺産分割を検討する必要があるでしょう。