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相続財産である損害賠償金が過小だとして支払いを求めた判決

【裁判】
裁判年月日: 平成18年3月30日
法廷名: 最高裁判所第一小法廷
裁判種別: 判決
結果: 棄却


【訴訟経緯】
亡き両親が交通事故に巻き込まれ死亡し、その相続人が交通事故の支払金額(賠償金)が過小だとして、訴えを起こした裁判。

■具体的経緯
・平成15年10月Aが運転する自動車が、道路を横断中のBに衝突し、Bは死亡した。
・Bの相続人は、Bの夫であるCとその子にあたる被上告人であった。
・平成15年12月Cが亡くなり、被上告人がその財産を相続した。
・Aは上告人である損害保険会社と自動車損害賠償責任保険を締結しており、被上告人に対し、1809万2496円が保険金額として支払われた。
・被上告人は上告人に対し、本件は支払金額の他に、自動車損害賠償法16条1項に基づいて、賠償損害金があるとして、その支払いを求めた訴訟である。


【判決】
原審の判決を支持、支払いの必要はないとした上告人の訴えを棄却。


【判決趣旨】
上告人は、自動車損害賠償法16条1項に基づいて、被害者に支払いを行ったと主張しているが、被害者が自動車保険会社に支払いを求める裁判を起こした場合、裁判所は自動車損害賠償法16条1項が規定する支払基準によることなく、損害額を算定して、支払いを命じることができる。


【理由】
自動車損害賠償法16条1項は、保険会社が訴訟外の支払いにおいて、公平かつ迅速的に支払保険金額を決定するために、その保険金額を確保する観点から義務付けられた内容である。しかし、訴訟においては、個々の状況、個別案件ごとの結果が尊重されるべきであるから、支払金額に違いが出ても、不合理とは言えない。よって、同内容の判決を下した原審の判断は、正当性がある。


【ポイント】
自動車損害賠償保障法16条 1 第三条の規定による保有者の損害賠償の責任が発生したときは、被害者は、政令で定めるところにより、保険会社に対し、保険金額の限度において、損害賠償額の支払をなすべきことを請求することができる。 2 被保険者が被害者に損害の賠償をした場合において、保険会社が被保険者に対してその損害をてん補したときは、保険会社は、そのてん補した金額の限度において、被害者に対する前項の支払の義務を免かれる。 3 第一項の規定により保険会社が被害者に対して損害賠償額の支払をしたときは、保険契約者又は被保険者の悪意によって損害が生じた場合を除き、保険会社が、責任保険の契約に基づき被保険者に対して損害をてん補したものとみなす。 4 保険会社は、保険契約者又は被保険者の悪意によって損害が生じた場合において、第一項の規定により被害者に対して損害賠償額の支払をしたときは、その支払つた金額について、政府に対して補償を求めることができる。


【最後に】
本裁判の焦点は、保険会社の規定に則り、支払いを行った保険会社に対し、その支払金額に更に支払の余地があると訴訟を起こした場合、個々の事情を考慮して支払を行うべきなのか、例え個々の事情があったとしても、法の規定する支払い額に則った画一的な支払いで良いのか、その基準を求めた判例です。保険会社も支払を行うために、賠償金額を平均せざるを得ませんから、その支払い方法で良いのか非常に興味深い判決です。