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相続発生後、実子ではない子に対し実親子関係不存在確認を求めた判決

【裁判】
裁判年月日: 平成18年7月7日
法廷名: 最高裁判所第二小法廷
裁判種別: 判決
結果: 破棄差戻


【訴訟経緯】
被上告人である母が相続発生後、突然、子である上告人に対し、非嫡出子であることを告げ、実親子不存在確認を求める訴えを起こした裁判。

■具体的経緯
・被上告人と亡きAは、昭和12年に婚姻の届出を出し、長男Bを授かる
・Aは上告人について、昭和18年に出生した子として出生届けを出したが、実子ではなかった
・Aが昭和51年に他界し、上告人はAの遺産の1/3を取得
・平成6年頃、被上告人が上告人を相手取り、親子不存在確認を求める届出を出したが、後にこれを取り下げる
・被上告人は平成16年4月頃、再度、上告人に対し、親子不存在確認を求める届出を出したが、同年6月に不成立により終了した
・上告人の主張としては、被上告人は、Aの死後平成6年まで実親子関係不存在確認調停の申立て等の手続を採ることなく、しかも、同年に申し立てた調停を取下げにより終了させており、被上告人の相続を有利にさせようとするBの意向が働いており、判決をもって上告人の戸籍上の地位が訂正されると上告人が精神的苦痛を受けることなどの事情に照らすと,本訴請求は権利の濫用であると主張している


【判決】
被上告人の請求を容認する原審を破棄差戻。


【判決趣旨】
実親子関係不存在確認は画一的かつ、親子関係の正確性を重視するものであり、関係者間に紛争がある場合に対世的効力を有する判決をもって画一的確定を図り、これにより実親子関係を公証する戸籍の記載の正確性を確保する機能を有するものであるが、民法においても、例外が認められている。


【理由】
長期間にわたり実の親子と同様に生活し、関係者もこれを前提として社会生活上の関係を形成してきた場合において、実親子関係が存在しないことを判決で確定するときは、上告人以外に著しい不利益を受ける者の有無等の諸般の事情を考慮し、実親子関係の不存在を確定することが著しく不当な結果をもたらすものといえるときには、当該確認請求は権利の濫用に当たり許されないものというべきである。


【ポイント】
親子不存在確認の請求は、親子不存在の事実確認だけではなく、その期間や実生活、はたまた、相手方の不利益まで考慮される。