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意思無能力者の相続税を代理申告した場合の債権を相続人に請求した判決

【裁判】
裁判年月日: 平成18年7月14日
法廷名: 最高裁判所第二小法廷
裁判種別: 決定
結果: その他


【訴訟経緯】
意思無能力者の相続税申告を他の相続人に無断で申告し、その納税資金を銀行から借入した場合の債権は他の相続人に請求できるか?

■経緯
・Aが昭和63年3月に死亡し、その相続人は妻Bと、AとBの子らであるCと被上告人らである。
・BはAの死亡時、意思無能力者であった。
・Aの相続人達は、その遺産分割協議を行ったが、成立には至らなかった。
・Cは翌年、Aの遺産に関わる相続税の申告を行うと共に、Bに代わってB分の相続税の申告も行った。
・その際、Bの納付すべき税額は6953万8500円。
・Cは、本相続税の納付につき、B名義で銀行から借入を行い、Bの納付すべき6953万8500円を納付した。
・Bの申告について、他の相続人はその事実を知らなかった。
・Bが昭和63年9月に亡くなり、その相続人はCと被上告人らであった。
・Cが平成5年に亡くなり、上告人はCの本件納付に係る債権を相続し、その費用を被上告人らに請求


【判決】
上告人の請求を却下した原審の判決を破棄差戻。


【判決趣旨】
原審では、相続税法基本通達27-4において、意思無能力者については、後見人が選任された日から申告書の提出義務が生ずるものと解釈できることと、相続税法35条2項1号において、意思無能力者には適用されないと解されるから、Aの死後6ヶ月を経過しても、税務署長は税額を決定することはなく、返ってBに納税義務を発生させる不利益を被らせたと解釈できる、と判断され、上告人の訴えを却下した。これに対し、本判決では、原審の「相続税は発生していない」とされる部分を否認し、原審への差し戻しを判決した。


【理由】
意思無能力者であっても、納付すべき相続税額がある以上、法定代理人又は後見人の有無にかかわらず、申告書の提出義務は発生しているというべきであって、法定代理人又は後見人がないときは、その期限が到来しないというにすぎない。
相続税法35条2項1号は、申告書の提出期限とかかわりなく、被相続人が死亡した日の翌日から6か月を経過すれば税務署長は相続税額の決定をすることができる旨を定めたものと解すべきであり、同号は、意思無能力者に対しても適用されるというべきである。
※判決文抜粋


【ポイント】
相続税の納税は、納付者の状況により期日の到来が異なる。相続税法27条4項。