会社イメージ

相続裁判事例:国債等を遺産分割に含めるよう差し戻した判決

【裁判】
事件番号:平成24(ク)984
事件名:遺産分割審判に対する抗告棄却決定に対する特別抗告事件
裁判年月日:平成25年9月4日
法廷名:最高裁判所大法廷
裁判種別:決定
結果:破棄差戻


【訴訟経緯】
相続人は両親の子供4人。両親の遺産である「国債等」の遺産分割協議中、相続人の内3人(以降Xらと呼称)が、残りの1人相続人(以降Yと呼称)に対し、当該国債の法定相続分を求め訴訟。相続人は子4人だけのため、法定相続分である1/4ずつの取得をXらは主張。


【判決】
遺産分割財産に含めるよう、原審に差し戻し。


【裁判趣旨】
原審では、遺産分割協議対象外財産として、Xらの請求を棄却していた。
原審の判断として、国債等は、可分債権として、解約、或いは相続人らへの名義変更時にそれ単独で法定相続分通り分けることが可能な財産であり、不動産のように分けてしまうと実務や利用に弊害が出てくる財産とは異なる。本来、遺産分割協議財産とは不動産のように分けてしまうと弊害が発生する財産や分けられない(分けるべきではない)財産を指すものであり、国債等は単独で法定相続分通り分割できる財産のため、遺産分割協議財産に含めることはできない。

しかし、最高裁の判決では以下の内容から、遺産分割財産に含めるよう差し戻し。
①株式は、配当や余剰金を受ける権利と株主総会での議決権を有し、その性質を鑑みると、安易に法定相続分に応じて分割されるものではない。これは「最高裁 昭和42年(オ)第867号 同45年1月22日第一小法廷判決」でも判決がなされた通りである

②相続財産の内、投資信託は口数毎の単位となっており、必ずしも法定相続分通り可分できるものではない。そして、信託財産に関する帳簿書類の閲覧、謄写の請求権などが規定されており、可分給付を目的とする権利ではないものも含まれている。この財産の性質を鑑みるならば、法定相続分通り分割されるべきものではない

③相続財産の内の国債も投資信託同様、口数単位となっており、必ずしも法定相続分通り可分できるとは言えない

以上より、本件国債等が相続開始と同時に、当然に相続分に応じて分割されるものでなければ、その最終的な帰属は、遺産の分割によって決せられるべきことになるから、遺産分割財産に含めるよう、原審へ差し戻し。


【理由】
国債等の「投資信託受益権」は、現預貯金のように相続発生時、当然の様に法定相続分通りに可分できるとは言えない。


【ポイント】
平成28年12月19日までは、現預貯金の法廷での扱いは、「遺産分割協議対象外財産」でした。相続発生時、当然の如く法定相続分通り可分できるものだから、不動産のように、話し合い遺産分割する必要がない。だから「遺産分割協議対象外財産」
※それまでは、法定相続人であれば、法定相続分の受け取り(払い戻し)が可能であった為、法定相続分通りは受け取れていたため

遺産分割協議財産 → 相続人同士で話し合って分ける財産。法廷においては、可分できないものが遺産分割協議財産として扱われる。(不動産や株式や権利など)

遺産分割協議対象外財産 → 現預貯金の他に受取人固有の財産がある。
(死亡退職金、生命保険金など)


【最後に】
現預貯金は「平成28年12月19日」最高裁において、遺産分割協議財産に含めるよう判決が見直されました。

主な理由として、それまでは法定相続人であれば、法定相続分の受け取りが可能であったが、近年は、金融機関側の対応が変わり、法定相続人だからと言って、受け取れなくなったこと。

2点目に、定期預金は、名義変更が済むまで、被相続人の財産のままであり、場合によって残高が変動すること。また、その様な状況中、その都度に応じて法定相続人単位で払い戻し金を算出し、対応を行うことは非効率的あること。

3点目に、一部の定期預金は預け入れ期間中に払い戻すと受取金が減少し、その様な性質を鑑みると可分財産ではなく、権利評価財産として捉えられるため