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遺留分の支払い完済までの遅延損害金を求めた判決

【裁判】
裁判年月日: 平成20年12月11日
法廷名: 最高裁判所第一小法廷
裁判種別: 判決
結果: 破棄自決


【訴訟経緯】
Aの法定相続人であり遺留分減殺請求権利者の上告人らが、Aから遺贈を受けた被上告人らに対し、遺留分の弁償金とこれに対する相続発生から支払い済みまでの遅延損害金を求めた裁判。

■経緯
・Aは生前に公正証書遺言を作成し、平成8年に他界した。
・Aの相続人は、妻Bと実子である上告人X1と被上告人Y1と被上告人Y2、そして養子である上告人X2とCである。
・Aの遺言には、妻Bと子である被上告人Y1、Y2に全財産を相続させる旨の記載があった。
・実子の上告人X1と養子のX2は遺留分減殺請求権を行使し、その相当額にあたる1/20ずつの返還を求めた。
・上告人らは平成9年に本訴を提訴し、不動産の持分移転手続きを求めたところ、平成15にY1が、翌平成16年にY2が価格弁償をする旨応じた。
・これに対し、上告人らは平成16年7月の第1審において訴えを変更し、価額弁償請求権に基づく金員の支払を求めるとともに、その附帯請求として,相続開始の日である平成8年から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた。


【判決】
原審の遅延損害金起算日を棄却。


【判決趣旨】
原審では、判決確定の日の翌日から支払済みまでの遅延損害金の支払を求める限度で認容すべきものとしたが、遺留分権利者が受遺者に対して価額弁償を請求する権利を行使する旨の意思表示をした場合には、当該遺留分権利者は、遺留分減殺によって取得した目的物の所有権及び所有権に基づく現物返還請求権をさかのぼって失い、これに代わる価額弁償請求権を確定的に取得すると解するのが相当である。

従って、訴えの変更をした日の翌日である同月17日から支払済みまでの遅延損害金の支払を請求することができると解釈するのが妥当。


【理由】
受遺者は,遺留分権利者が受遺者に対して価額弁償を請求する権利を行使する旨の意思表示をした時点で、遺留分権利者に対し、適正な遺贈の目的の価額を弁償すべき義務を負うというべきであり、同義務の発生時点が事実審口頭弁論終結時となるものではない。
※判決文抜粋


【ポイント】
遺留分請求起算日は、遺留分権利者がその権利を行使することを意思表示した日。


【最後に】
遺留分の弁済価格を求める遺留分減殺請求権の行使、又は、その金額についての訴えは複数ありますが、その遅延金の請求とその起算日に対する判決は珍しいものであり、その具体的日付が明示された判決ともいえます。