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相続の代償提供とした不動産登記を拒否した法務局を無効とした判決

【裁判】
裁判年月日: 平成20年12月11日
法廷名: 最高裁判所第一小法廷
裁判種別: 判決
結果: 破棄自決


【訴訟経緯】
相続した不動産を登記義務者である上告人が登記権利者と共同して、所有権移転登記を申請したところ、地方法務局登記官から申請を却下する旨を受けたため、その取り消しを求めた判決。背景としては、上告人Aの他4名の間で遺産分割調停を家庭裁判所で成立。本件調書には、上告人Aが、被相続人の遺産である土地を取得した代償として、他の相続人2名に対し、上告人所有の建物を持分2分の1ずつの割合で譲渡する旨の条項を締結。


【判決】
判決。所有権移転登記申請を却下する旨の決定を取り消し。


【判決趣旨】
原審においては、地方法務局登記官の判断を支持し、その理由として「登記原因証明情報として添付された本件調書中の本件条項には、上告人が遺産取得の代償として本件建物を譲渡する旨が記載されているものの、それがいかなる法律行為によるものであるかが特定明示されていない。本件条項をみても、本件建物の譲渡が有償であるか無償であるか、有償であるとして、だれとの間でどのような対価関係に立つものであるか等が必ずしも明らかではなく、物権変動の原因となる法律行為の特定がされているとは認められない。したがって、本件調書には、登記の原因となる法律行為を特定する記載がなく、本件調書は登記原因証明情報とはなり得ないので,本件申請は登記原因証明情報の提供を欠くというべきである。」という、不動産登記法61条の登記原因の証明が提供できていないことを挙げている。しかし、本判決にではそれを破棄している。


【理由】
本件条項による合意は、上告人が遺産分割によって被相続人の遺産である土地を取得する代償として本件建物を本件譲受相続人に譲渡することを内容とするものであり、その譲渡は、代償金支払義務があることを前提としてその支払に代えて行われるものとはされておらず、また、本件建物の譲渡自体について本件譲受相続人から上告人に対して反対給付が行われるものとはされていないというのであるから、上記の合意は、上告人が本件譲受相続人に対し、遺産取得の代償として本件建物を無償で譲渡することを内容とするものであるということができる。そうすると、本件調書中の本件条項の記載は,登記の原因となる法律行為の特定に欠けるところがなく、当該法律行為を証する情報ということができるから、登記原因証明情報の提供を欠くことを理由に本件申請を却下した本件処分は違法というべきである。
※判決文抜粋

要は、相続の代償として無償で譲渡すると解釈できるため、登記原因の証明が成り立つと判断できる。


【ポイント】
不動産登記法61条
「権利に関する登記を申請する場合には、申請人は、法令に別段の定めがある場合を除き、その申請情報と併せて登記原因を証する情報を提供しなければならない。」


【最後に】
不動産登記の原因が明確ではなく、如何様にも取れるため、登記を却下した内容を支持した原審と、上告人らの話から「相続の代償として無償で譲渡する」と解釈するのが妥当であり、明確な理由になると判断した本判決。その対極が本裁判の特徴かと思います。