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相続人が他の相続人の国税延滞金の納税義務を負った判決

【裁判】
裁判年月日: 平成21年12月10日
法廷名: 最高裁判所第一小法廷
裁判種別: 判決
結果: 棄却


【訴訟経緯】
Aは昭和62年以降、所得税等含め11億円余りの国税を延滞していた。Aの妻であるBが死亡し、その相続人はBの配偶者であるAと、AとBの子であるCとDである。
Bの相続財産は2億円であり、遺産分割協議により、Aはその法定相続分以下(2000万円)を、Cは法定相続分を上回る1億2800万円の財産を取得した。
本件は、遺産分割協議によりその相続分を超える財産を取得した上告人Cが、同分割協議によりその相続分に満たない財産を取得した共同相続人Aの滞納に係る国税につき、国税徴収法39条に基づく第二次納税義務の納付告知を受けたことから、その取消しを求めた裁判。


【判決】
判決。上告人Cに対し、国税徴収法39条に基づき、第二次納税義務を命じる。


【裁判趣旨】
国税の滞納者が、滞納者自身を含む遺産の分割において、滞納者自身が法定相続分以下の財産を取得し、他の相続人にその法定相続分を超える財産を取得させる行為は、国税徴収法39条にいう第三者に利益を与える処分に当たり得るものと解するのが相当。


【理由】
同条所定の第二次納税義務が成立するためには滞納者にいわゆる詐害の意思のあることを要するともいうが、前記事実関係によれば、Aに詐害の意思のあったことは明らかである上、そもそも同条の規定によれば、滞納者に詐害の意思のあることは同条所定の第二次納税義務の成立要件ではない。
※判決文抜粋


【ポイント】
国税徴収法39条(無償又は著しい低額の譲受人等の第二次納税義務)
滞納者の国税につき滞納処分を執行してもなおその徴収すべき額に不足すると認められる場合において、その不足すると認められることが、当該国税の法定納期限の一年前の日以後に、滞納者がその財産につき行った政令で定める無償又は著しく低い額の対価による譲渡(担保の目的でする譲渡を除く。)、債務の免除その他第三者に利益を与える処分に基因すると認められるときは、これらの処分により権利を取得し、又は義務を免かれた者は、これらの処分により受けた利益が現に存する限度(これらの者がその処分の時にその滞納者の親族その他の特殊関係者であるときは、これらの処分により受けた利益の限度)において、その滞納に係る国税の第二次納税義務を負う。


【最後に】
相続人の内1人が、国税を延滞していたとはいえ、遺産分割内容によって、他の相続人が国税を滞納していた者の二次納税義務を負うのも珍しい内容かと思います。但し、上記判決文上での事実確認によれば、当該国税延滞者は11億円もの過大の金額を延滞しており、その経緯がどのような内容だったのかも気になる点ではあります。