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社員死亡による医療法人持分の支払いを求めた判決

【裁判】
裁判年月日: 平成22年4月8日
法廷名: 最高裁判所第一小法廷
裁判種別: 判決
結果: その他


【訴訟経緯】
上告人Aが、被上告人である医療法人に対し、その出資者である上告人の父Bと母Cの出資金返還請求権を父Bと母Cの死亡により相続したとして、出資金の返還を請求する事案。
被上告人である医療法人は上告人の父Bと母Cが出資し、それ以外の出資者はいない。
Bは昭和57年10月3日に、Cは平成13年6月14日にそれぞれ死亡し、被上告人の社員の資格を喪失。被上告人の医療法人の定款には以下の規定がある。
・被上告人の社員は,総会の決議等によるほか,その死亡によって社員の資格を失う(6条)
・退社した社員はその出資額に応じて返還を請求することができる(8条)


【判決】
判決。Cの出資に係わる出資金返還請求の内、遅延損害金並びに出資金算出方法について破棄。東京高等裁判所に差し戻し。


【裁判趣旨】
被上告人の主張の通り、Bの持分は、Bの死後10年以上経過しており、時効で消滅した判断できる。(民法上の債権の原則的な消滅時効期間は10年間)
Cの持分には遅延損害金は加算されない。


【理由】
原審では、Cの持分には請求日以後の遅延損害金を求める権利があると判決されたが、遅延損害金は容認できない。その理由として、Cの出資金を算出するにあたり、Cの出資金単独で計算がなされており、まずは出資金総額(Bの出資額+C出資額)を求め、その内のCの出資割合が支払い額であるから、同請求権が消滅したとしても、C分の出資金返還請求権の額が増加することはないと解すべき。
※要は、算出方法が誤っており、法令に則った払い戻し額を算出すると、出資金返還請求権の額が増加することはないので、遅延損害金が加算されるのはおかしい。

※上告人の請求金額はBの出資金返還請求権が消滅したのであれば、出資者はCのみとなり、医療法人の純資産額×出資割合(出資者はCのみなので100%)を請求していると見られる。


【ポイント】
医療法人の持分であっても、時効があり10年で請求権が消滅する。


【最後に】
医療法人の持分はトラブルが多く、その請求金額の大きさもポイントです。基本概論としては医療法人の純資産×(総出資額÷該当者の出資額)となります。一般営利法人とは異なり、医療法人は剰余金の分配が禁止されていますので、特に利益が内部留保しやすくなります。5年に一度の診療報酬改定により売上金が変動しやすい業種だからこそ、持分の対応は今一度真剣に考えるべき内容と言えるでしょう。