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相続裁判事例:私道に纏わる加算税取り消しを求めた判決

【裁判】
事件番号:平成28(行ヒ)169
事件名:相続税更正及び加算税賦課決定取消請求事件
裁判年月日:平成29年2月28日
法廷名:最高裁判所第三小法廷
裁判種別:判決
結果:破棄差戻

【裁判趣旨】
相続が発生し、相続財産である私道の用に供されている宅地を「私道共用宅地」として相続税申告したところ、税務署長から「貸家建付地」として評価するべきであると、 過少申告加算税賦課決定を受けたため、取り消しを求めた事案。

【判決】
税務署の評価が正しいとする原判決を破棄し、本件を東京高等裁判所に差し戻し

【理由】
評価の仕方は税務署の判断の通りであるが、総合的な状況を見ると、経緯として、当該土地が都市計画法の開発行為の許可を受け、相模原市開発行為等指導要綱を踏まえた市の指導によって市道に接する形で整備され、本人の意志のみで他の用地に用意に変更することが難しく、また、平成25年4月以降、近隣の小学校の通学路として指定され、止むを得ず、第三者が通行している。このような状況を鑑みた時、当該土地の利用価値がその他通常の土地と同価値と判断して良いとは言えず、市の指導要綱等を踏まえた行政指導によって私道の用に供されるに至った経緯もあり、原審へ差し戻し。

【ポイント】
建築基準法や法令の制約のみならず、当該宅地の交換価値に客観的低下が認められるかどうか?

【私道の評価:評価通達24】
私道には、①公共の用に供するもの、例えば、通抜け道路のように不特定多数の者の通行の用に供されている場合と、②専ら特定の者の通行の用に供するもの、例えば、袋小路のような場合があります。
私道のうち、①に該当するものはその私道の価額は評価しないことになっています。②に該当する私道の価額は、その宅地が私道でないものとして路線価方式又は倍率方式によって評価した価額の30%相当額で評価します。
※国税庁「No.4622 私道の評価」より

【最後に】
相続において土地の評価は難しく、土地の専門家ほど「土地は図面だけではなく、実際にその土地を見てみないと正しい判断・評価・申告ができない」と言われます。
本判決においては、法令上の評価にのみ縛られず、経緯と利用状況から総合判断された一件と言えます。