会社イメージ

みなし相続財産とならない「生命保険契約」とその注意点

被相続人が亡くなられた場合、様々な相続財産を集約し、その財産を以って相続税の申告、遺産分割を行わなければならないが、特定の生命保険契約は、「通常通り遺産分割協議の対象となるもの」と「そうでない特定の相続人の財産」となるケースがあります。

昨今、保険契約も様々な相続対策に使用されるため、この点留意しておく必要があるでしょう。


【相続における生命保険の基本概要】
まず、相続において「生命保険の死亡保険金」は「みなし相続財産」と言い、原則、遺産分割協議財産の対象外財産です。

この場合、遺留の侵害の対象外財産となり、死亡保険金受取人の固有財産となります。

従って、特定の人物に特定の金額を遺したい場合、生命保険を活用することは非常に有用です。

※但し、過去裁判において、過度に遺留分侵害を行った保険契約は無効される判例もあったので、その点、注意が必要となります。

この場合、契約形態は以下の通りです。


契約形態
契約者(+保険料支払い) →  A
被保険者 → A
死亡保険金受取人 → A以外の財産を相続させたい方

※Aが財産を遺す被相続人となります。

【みなし相続財産とならない契約形態】
前述の通り、昨今生命保険も商品の多様化に合わせ、契約形態も上記の通常契約形態と異なるものが発生してきています。

特に「保険料の支払い」を財産を遺す被相続人が行っており、それ以外の「保険契約者」「保険金受取人」が被相続人でない場合、「みなし相続財産になるケース」と「ならないケース」に分かれます。

ここでは、「国税庁発行 平成28年度 相続税法講本」から、そのケースを解説致します。


【国税庁発行 平成28年度 相続税法講本(p17)】
生命保険契約に関する権利
相続開始の時までに保険事故が発生していない生命保険契約で、①被相続人が保険料の全部又は一部を負担し、かつ、②被相続人以外の者が契約者である場合には、相続開始によってその契約者は、その契約に関する権利のうち、被相続人が負担した保険料の額に対応する部分を、相続又は遺贈により取得したものとみなされる(相法3①三)。 なお、被保険者でない保険契約者が死亡した場合で、保険料をその契約者が負担していたときは、その契約に関する権利は、相続人その他の人が相続又は遺贈により取得する本来の相続財産となる。

【要約】
■ケース1

・契約者A 保険料支払いA 被保険者B 保険金受取人C
※Aが死亡の場合
→遺産分割協議財産。みなし相続財産とはならない。


■ケース2
・契約者B 保険料支払いA 被保険者B 保険金受取人C
※Aが死亡の場合
→Bの「みなし相続財産」となる


生命保険は、被保険者と呼ばれる方が亡くなった場合に、死亡保険金が支払われます。

よって、
・保険料の支払いを被相続人(財産を遺す方)が行っている
・「被保険者欄」に被相続人(財産を遺す方)の名前がない場合
→「保険契約者」の「みなし相続財産となる」と覚えておくと良いかと思います。

分かりやすく、血縁を示すなら

■ケース1
契約者:旦那様
保険料支払い:旦那様
被保険者:奥様
保険金受取人:子供

※旦那様が死亡の場合

→遺産分割協議財産。みなし相続財産とはならない。


■ケース2
契約者:奥様
保険料支払い:旦那様
被保険者:奥様
保険金受取人:子供

※旦那様が死亡の場合

→奥様の「みなし相続財産」となる


こうすると、意外と「ケース2」のパターンは多いかと思います。
※奥様が生命保険に加入したが、支払いは所得がある旦那様の口座から引き落とすケース

このケースにおいても、旦那様の相続発生時、相続財産として記入することを忘れないようにしましょう。

記入し忘れた場合、税務調査に引っかかると加算税の対象となります。

近年、生命保険も多様化し、様々な加入パターンがありますが、加入形態により相続財産としての性質が異なってくる事がご理解頂ければ幸いです。