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事業継承における相続と自社株分散の問題

事業継承において「自社株の分散」は
経営権が分散してしまうため

意思統一が困難になり、その後の経営に大きな支障をきたす恐れがあります。

しかし、一方で相続には「遺留分」という
受ける側の最低限の財産権利も保護されているため

財産の内、自社株の割合が相当分を占めていると
「事業継承」という観点から見ると大きな課題となります。

まず、これらを解消する方法として真っ先に挙げられる方法が

①生命保険に加入し、後継者以外の相続人に法定相続分相当額ないし
遺留分相当額以上の死亡保険金をかけること

②後継者以外の相続人に遺留分相当額、ないし相当額以上を生前に贈与し、
遺留分を破棄してもらうこと

以上の様な方法が浮かび上がります。
※いずれも遺言書の活用が前提

しかし、民法には「遺留分に関する特例」というものがあり
もう1つの方法が存在します。

これは平成20年5月に成立した特例で、
後継者に自社株を集中して承継させようと遺言書を用意しても

遺留分を侵害された相続人から遺留分に相当する額の返還を求められると
自社株が分散してしまい、事業継承にとって大きなマイナスとなり

それを防止できるよう新たに設けられた制度がこの特例になります。

これを「経営継承円滑化法」といいます。
※経済産業省「遺留分に関する民法の特例」を参照

経営継承円滑化法は、一定の条件の下
2つの特例が存在します。

①除外合意
後継者を含めた現経営者並びに現経営者の推定相続人の合意の上で
現経営者から後継者に贈与された自社株について、遺留分算定基礎財産から除外できる特例

②固定合意
遺留分算定基礎財産に参入する価格を合意時の時価に固定し
相続時においても合意時の時価で評価価格が固定される特例

①除外合意と②固定合意の違いは
①は贈与された自社株について遺留分算定基礎財産から除外できるのに対して

②は相続時、遺留分算定基礎財産から除外できないものの
相続時における自社株の価格が上昇しても、固定時の価格で評価できる

というものです。

但し、前述でお伝えした通り、以下の一定の要件が必要です。

①推定相続人全員の合意が必要なこと
②会社:合意時点において3年以上継続して事業を行っている非上場会社であること
③現経営者:過去又は合意時点において会社の代表者であること
④後継者:合意時点において会社の代表者であること
⑤後継者:現経営者から贈与等により株式を取得し、会社の決議権の過半数を保有していること

つまり、後継者が決まっていること、経営権を後継者に移しても問題ない状況であること
推定相続人全員の合意が必要であること

また、②の固定合意は合意時における相当な価格であると
税理士、公認会計士、弁護士等による証明が必要となります。

事業継承において、後継者問題があることを踏まえると
実行にはある程度難点が付き纏いますが

課題が多い事業継承において選択肢が1つ増えるという点においては
覚えておくべき内容と言えるでしょう。