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平成29年度税制改正案補足

平成29年度税制改正案の内容について、主に相続税・事業承継部分をメインに詳細を解説していきます。


【原文】
1)取引相場のない株式の評価の見直し

①類似業種比準方式について、次の見直しを行う
イ.類似業種の上場会社の株価について、現行に課税時期の属する月以前2年間平均を加える。
ロ.類似業種の上場会社の配当金額、利益金額及び簿価純資産価額について、連結決算を反映させたものとする。
ハ.配当金額、利益金額及び簿価純資産価額の比重について、1:1:1とする。
(注)現行は「1:3:1」


【解説】
非上場会社の株価算定の際に重要な基準となる「類似業種の上場会社の株価」を平均化、算出することで、「類似業種の上場会社の株価」が一時的に高騰した場合の非上場会社の株価(相続税)を抑えようとするもの。

同様に、「配当金額、利益金額及び簿価純資産価額の比重」を「1:3:1」から「1:1:1」に変更することで、一時的に利益金が多く発生した企業の株価(相続税)を抑えようというもの。

この動きにより、相続税はもちろん、株価が高騰し、生前に事業承継を踏み出し辛い法人を後押ししたいという狙いもあるのでは、と推測できる。



【原文】
1)取引相場のない株式の評価の見直し

②評価会社の規模区分の金額等の基準について、大会社及び中会社の適用範囲を総じて拡大する。
(注)上記の改正は、平成29年1月1日以後の相続等により取得した財産の評価に適用する。


【解説】
非上場会社の株価は、一般的に区分(小会社→中会社→大会社を指す)が上がると、1株あたりの株価が下がる仕組みとなっているため、中会社及び大会社の適用範囲を拡大することで、1株あたりの株価を下げ、生前贈与及び相続税の軽減を図っていると推察できる。



【原文】
2.非上場株式等に係る相続税・贈与税の納税猶予制度の見直し

(1)相続時精算課税制度に係る贈与を、贈与税の納税猶予制度の適用対象に加える。

(2)納税猶予の取消事由に係る雇用確保要件について、相続開始時または贈与時の常時使用従業員数に100分の80を乗じて計算した数に1人に満たない端数があるときは、これを切捨てることとする。
((注)現行は「切上げる」)

ただし、相続開始時または贈与時の常時使用従業員数が1人の場合には、1人とする。

(3)非上場株式等の贈与者が死亡した場合の相続税の納税猶予制度における認定相続承継会社の要件について、中小企業者であること及び当該会社の株式等が非上場株式等に該当することとする要件を撤廃する。


【解説】
非上場会社の納税猶予制度は、
・生前に全経営者が経済産業局に認定を受けていること
・対象企業が一部の業種にのみ限定していること
以上のことから、実際の相続税発生時での使用が現実的でなく、使用が難しいことから、条件を緩和したものとみられる。

但し、改正案の文面のみ見ると、「生前に全経営者が経済産業局に認定を受けていること」の撤廃がないことから、依然、同局での生前認定が必要なものと判断できる。



【原文】
4.平成18年医療法等改正法の改正を前操とする税制上の捨置

(1)平成18年医療法等改正法に規定する移行計画の認定を受けた医療法人の持分を有する個人が、その持分の全部または一部の放棄をしたことにより、その医療法人がその認定移行計画に記載された移行期限までに持分の定めのない医療法人への移行をした場合には、その医療法人がその放棄により受けた経済的利益については、贈与税を課さない。ただし、上記の適用を受けた医療法人について、持分の定めのない医療法人への移行をした日以後6年を経過する日までの間に移行計画の認定要件に該当しないこととなった場合は、上記の経済的利益につき、その医療法人を個人とみなして贈与税を課する。


【解説】
医療法人社団の承継課題である「持分」(一般会社で言う株式)は、以前より、放棄すると他の持分所有者に贈与税がかかり(他の持分所有者の持分評価額が上がるため)、全員が放棄すると法人に贈与税が掛かるという問題があり、非常に頭を悩ませる存在であった。また、国の方向性でもある「持分のない医療法人」に移行しようにも、全員が持分を放棄すると法人に贈与税が掛かり、どうしようにもない状態であった。本改正は、その「持分のない医療法人」に移行しようと刷る際の贈与税を撤廃しようとする内容である。

医療法人の持分全てを放棄すると、凡そ、医療法人の純資産額の半分が贈与税として持っていかれるため、その措置であろうと推察できる。



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