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医療法人の持分についての相続税の納税猶予の特例

医療法人の事業承継及び資金繰りにおいて、多大な影響を及ぼす存在として「持分」が存在し、「医療法人の総出資額から自己の出資額を割った割合×請求時点での医療法人の純資産額」が支払額になるという点から、これまで様々な問題を抱えてきました。

例えば、医療法人の総出資額が1億円で、該当者が5000万円を出資していた場合、現在の医療法人の純資産(医療法人が蓄えてきたお金)の半分が該当者に支払われる(正確に言えば、社員を退社したとき請求する権利を持つ)ことになります。

医療法人の経営は、厚労省の診療報酬改定に大きく左右されることから、一般的な病院経営=儲かるというイメージと実際は大きく乖離しており、利益率はそれほど高くありません。

そのため、病院経営は、一般的なイメージとは間逆の苦しい経営なのです。

その中で、社員(営利法人で言う役員)が退社した時、或いは、相続が発生した時、法人の純資産の一定割合を支払わなければならなくなったら、どうなるでしょうか?

持分の支払いは法的に認められた権利で、過去の裁判事例を見ても、持分の破棄を除き、支払いはほぼ命じられています。

その中で、国の制度として「持分の相続税及び贈与税の納税猶予と免除」があり、現状その条件厳しさから見送られている方も多いとは思いますが、平成29年10月以降も制度継続及び条件緩和が見込まれており、今一度詳細を把握しておいても良いかと思います。


【医療法人の持分についての相続税の納税猶予の特例】
平成26年10月~平成29年9月30日の3年間の認定期間内に、厚生労働大臣に出資持分の無い医療法人への移行計画の申請を行い、認可を受けた場合、認定移行計画に記載された移行期限(平成26年10月~平成29年9月30日の3年間)まで、持分の相続の際に課税される相続税が猶予もしくは免除される


【認定医療法人の認可条件】
①医療法人の組織運営が適正であること
②医療法人の役員の総数のうち、親族が1/3以下であること
③医療法人の関係者に対して特別な利益の供与をしていないこと
④医療法人が解散した場合に、残余財産の帰属先が国、地方公共団体、公益法人に限定されていること
⑤法令違反など公益に反する事実がないこと
⑥移行計画が社員総会において決議されたものであること


【認可条件のネック】
多くの専門家の指摘している通り、最大のネックは①と②で、この点が現状の医療法人社団(持分あり)の経営実態と乖離している点でしょう。

持分ありの医療法人社団の殆どが、所謂、家族経営が成り立ちであり、その社員(役員)もほぼ親族で占めています。所謂、総合病院クラスの大きな医療法人であれば、最悪、移行時に社員の中から該当人物を選出すれば良いのかもしれませんが、医療法人の9割を占めるのは、所謂「クリニック」であり、この様な中小企業が役員クラスを選出するのは容易ではありません。

また、親族を1/3以下にしようとし、その持分を他人(新規役員も含む)に譲渡した場合や、単純に、払い戻しを請求した場合は贈与税が現行通り課せられる点など、持分の出資割合を変更しにくい点も認定を受けにくい1つかと思います。
※但し、認定条件は「役員の数」です。

課税を避けるならば、新規で社員(役員)を選出するしかなく、その場合、新規出資者がその出資金をどうするのか?という課題もあります。

また、医療法人の適正な組織運営とは、特定医療法人や社会医療法人に移行する場合の条件が課せられ、この点も障害の1つとなっています。


【今後の流れ】
現状、認定を受け、持分なしの医療法人に移行している医療機関が少ないことから、期間延長と「医療法人の役員の総数のうち、親族が1/3以下」を緩和しようとする動きがあり、もう暫らく様子を見るべき制度と言えます。



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